うつ病は、何もやる気が出ない(意欲低下)・悲しい気持ちになる(抑うつ気分)などの「こころの症状」と、食欲がでない(食欲低下)・眠れない/起きられない(不眠/過眠)・体がだるい(倦怠感)・口が渇く・頭痛・動悸・めまいや耳鳴りなどの「体の症状」が現れる病気です。体の症状が目立つため、こころの症状に気づきにくいことがあります。体の不調を感じたときは、かかりつけ医に相談してみましょう。
交通事故重傷者のおよそ3割が、約1ヵ月後にうつ病やPTSDなどの精神疾患を発症します。精神疾患の発症を予防することを目的にした研究や、事故後の精神疾患が怪我の回復やリハビリにどう影響するかを調べる研究が期待されています。
女性の一生のうちで妊娠中や出産後は、うつ病が起こりやすい時期です。その結果として子育てに自信がなくなり、お子さんも可愛く思えず「自分は母親失格」などと考えがちです。しかし、うつ病になった妊産婦の多くの方は適切な治療を受けていないのが現状です。治療法には薬以外にも心理療法や環境の調整も考えられます。ご本人・ご家族の十分な理解のもと、個々の患者さんにあった治療を選択できるように専門医とご相談されることをお勧めします。
それまでひとつの物事に没頭していた人が、心身の極度の疲労により燃え尽きたように意欲を失い、社会に適応できなくなること。
自分の手首などを傷つける自傷行為のひとつ。死に至ることは少ないが、治療には時間がかかることが多く、周囲の理解が必要。
自分やものを過小評価し否定的になる状態。うつ病などで見られる症状のひとつ。
ある期間でうつ状態と躁状態が交互に繰り返される気分障害。
家庭内暴力とも呼ばれる。家族の間で行われる身体的または精神的虐待行為のことであるが、日本では、「配偶者や恋人など親密な関係にある、またはあった者から振るわれる暴力」という意味で使用されることが多い。
認知の歪みに焦点を当て修正をしていくことで、そこに起因する症状などを軽減していく短期精神療法のひとつ。
うつ病などの様々な心の病に対する有効性が医学研究で立証されている心理療法。
精神疾患の診断と治療を専門的に行う医師。
不安障害などによる不安やイライラを軽減・解消するための薬剤。使用には医師の的確な処方が必要である。
うつ病治療の基本薬で、現在は副作用の少なさを考え、SSRIやSNRIが主に使われている。
交感神経の情報伝達に関与する神経伝達物質。副腎髄質から分泌されるホルモンの1つでもある。
「健康日本21(第二次)」とは、2013(平成25)年から行われている国民健康づくり運動のことです[1]。基本方針に基づいて設定された53項目の目標の中で、飲酒(アルコール)に関して3つの目標が設定されています。2022年10月の最終評価では、改善がみられなかった項目もあり、アルコール健康障害対策のさらなる推進が重要視されています。
アルコール依存症の治療では、心理・社会的治療が大きな役割を果たしています。代表的な介入法として、認知行動療法・動機づけ面接法・コーピングスキルトレーニングなどがあり、有効性も実証されています。日本でもGTMACKと呼ばれる新しい入院治療プログラムが開発されています。
依存症の危険因子には「1. 女性の方が男性より短い期間で依存症になる」「2. 未成年から飲酒を始めるとより依存症になりやすい」「3.遺伝や家庭環境が危険性を高める」「4.家族や友人のお酒に対する態度や地域の環境も未成年者の飲酒問題の原因となる」「5.うつ病や不安障害などの精神疾患も依存症の危険性を高める」といったことが知られています。
アルコールには依存性があります。飲酒を続け、耐性・精神依存・身体依存が形成され、飲酒のコントロールができなくなる状態がアルコール依存症です。アルコール依存症になると、身体・仕事・家族関係などの様々な問題が起きます。アルコール依存症は酔って問題を起こすこととは異なります。
女性の飲酒は近年一般的になってきましたが、①血中アルコール濃度が高くなりやすい、②乳がんや胎児性アルコール症候群などの女性特有の疾患のリスクを増大させる、③早期に肝硬変やアルコール依存症になりやすいなど、特有の飲酒リスクがあります。
妊娠中の母親の飲酒は、胎児・乳児に対し、低体重や、顔面を中心とする形態異常、脳障害などを引き起こす可能性があり、胎児性アルコール・スペクトラム障害といわれます。胎児性アルコール・スペクトラム障害には治療法はなく、唯一の対策は予防です。また少量の飲酒でも、妊娠のどの時期でも影響を及ぼす可能性があることから、妊娠中の女性は完全にお酒をやめるようにしましょう。
アルコール依存症および大量飲酒者には脳萎縮が高い割合でみられること、大量に飲酒したりアルコールを乱用した経験のある人では認知症になる人が多いといった疫学調査結果から、大量の飲酒は認知症の危険性を高めることが示されています。一方で少量ないし中等量の飲酒は認知症の原因にはならないのみならず、認知症の予防になる可能性があります。
アルコール依存症とうつ病の合併は頻度が高く、アルコール依存症にうつ症状が見られる場合やうつ病が先で後から依存症になる場合などいくつかのパターンに分かれます。アルコールと自殺も強い関係があり、自殺した人のうち1/3の割合で直前の飲酒が認められます。
日本の自殺者数は、平成10年(1998年)に一挙に3万人を超え、以後高い数値が続いています。この急増は「経済・生活問題」による中高年男性を中心としたものであり、バブル崩壊の影響が推測されています。現在、日本の自殺の実態把握は厚生労働省と警察庁のデータに頼るしかなく、より詳細な実態把握が課題となっています。
犯罪被害は強い衝撃をもたらします。被害直後の不安や混乱は時間の経過とともに軽減していきますが、ASD・PTSD・うつ病などを発症する場合も少なくありません。これらの疾患や被害による認知の変化から、社会生活機能が障害されることもあります。被害者の回復のための支援が必要です。現在日本では警察や民間被害者支援団体などの支援窓口がつくられ、犯罪被害者等基本法に基づいて被害者支援が推進されてきています。
DV被害によって被害者とその子どもには様々な心身の健康障害が引き起こされることがわかっています。例えば被害者には直接的な暴力による怪我の他にも慢性身体疾患への罹患、うつ病やPTSD・アルコール乱用・薬物乱用などが起こり得ます。周囲の人たちには被害者とその子どもの状態を理解し、長い目で援助していく視点が重要です。
災害は大きな心理的な負担を与えるため、人が心身の変調を感じることは正常な反応ともいえます。しかしなかにはうつ状態・PTSDなどの精神症状や、飲酒や喫煙などの健康問題が増えることもあります。その際には適切な医療サービスや周囲の人からの支え(ソーシャルサポート)を得て、こころのケアに配慮することが重要です。
心的外傷後ストレス障害(Posttraumatic Stress Disorder)の略です。生死に関わるような体験をし、強い衝撃を受けた後で、その体験の記憶が当時の恐怖や無力感とともに、自分の意志とは無関係に思い出され、まだ被害が続いているような現実感を生じる病気です。日本の総人口の1.3%に生じるとされ、それほど珍しくない病気といえます。3カ月以内に半分以上の方が自然回復するものの、1年以上経っても一定数の方は自然回復しないとする研究もあります。持続エクスポージャー療法(認知行動療法)やSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの薬で治療することができるようになってきました。
糖尿病患者はうつ病になりやすく、またうつ病患者も糖尿病になりやすいといわれています。うつ病になると、血糖値のコントロールがむずかしくなり、糖尿病の合併症が多くなりますので、うつ病を早期に発見し適切な治療を受けることが重要です。
心疾患や脳血管疾患に代表される循環器疾患の中にはうつ病を発症している人も少なくありません。うつ病になると循環器疾患の再発や予後によくない影響があると報告され、注目されています。うつ病を早期に発見し、適切な治療を受けることが重要です。
「うつ」や「うつ病」に自分自身で気づいたり、家族や職場の同僚など近くにいる方が気づくことはとても大事です。心配な時にはまず、疲れたこころと体を十分に休めます。医学的な治療が必要な場合には、医師による診察の後に必要に応じて適切な治療法を選択し、十分時間をかけて治療することが大事です。
職場のメンタルヘルスは、働く人々の心の健康づくりを行うものです。企業には過労自殺などが発生しないように、労働者にとって過重な労働負荷を防ぎ、適切なメンタルヘルスケアを提供する責任があります。職場のメンタルヘルス対策を組織として計画的に継続して実施することで職場を活性化することができます。
小児の睡眠不足や睡眠障害が持続すると、肥満や生活習慣病(糖尿病・高血圧)、うつ病などの発症率を高めたり症状を増悪させたりする危険性があります。適切に対処していくには「早起き・早寝」という基本的な生活習慣から見直すことが必要です。
年齢とともに睡眠は変化します。健康な高齢者の方でも睡眠が浅くなり、中途覚醒や早朝覚醒が増加します。また睡眠を妨げるこころやからだの病気にかかると、不眠症や睡眠時無呼吸症候群などのさまざまな睡眠障害が出現します。原因に合わせた対処や治療が必要です。
不眠症とは、入眠障害(寝つきが悪い)・中途覚醒(眠りが浅く途中で何度も目が覚める)・早朝覚醒(早朝に目覚めて二度寝ができない)などの睡眠問題があり、そのために日中に倦怠感・意欲低下・集中力低下・食欲低下などの不調が出現する病気です。不眠は誰でも経験しますが、自然に改善して再び眠れるようになることが大部分です。ただし、いったん慢性不眠症に陥ると適切な治療を受けないと回復しにくいといわれています。不眠の原因はストレス・こころやからだの病気・薬の副作用など様々で、原因に応じた対処が必要です。不眠が続くと不眠恐怖が生じ、緊張や睡眠状態へのこだわりのために、なおさら不眠が悪化するという悪循環に陥ります。家庭での不眠対処で効果が出ないときは専門医に相談しましょう。睡眠薬に対する過度の心配はいりません。現在使われている睡眠薬は適切に使用すれば安全です。
健やかな睡眠があってこそ十分な休養をとることができます。
現代生活はシフトワークや長時間通勤・受験勉強・インターネットやゲームをしての夜型生活など、睡眠不足や睡眠障害の危険で一杯です。睡眠不足による産業事故、慢性不眠によるうつ病や生活習慣病の悪化など、睡眠問題を放置すると日中の心身の調子にも支障をもたらします。
私たちは人生の3分の1を眠って過ごします。最も身近な生活習慣である睡眠にもっと目を向けてみませんか。