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胎児性アルコール症候群

妊娠中の母親の飲酒は、胎児・乳児に対して低体重・顔面を中心とする奇形・脳障害などを引き起こす可能性があり、胎児性アルコール症候群と言われます。胎児性アルコール症候群には治療法はなく、また少量の飲酒でも妊娠のどの時期でも生じる可能性があることから、妊娠中の女性は完全にお酒を止めるようにしましょう。

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妊娠中のお母さんが飲酒すると、生まれてくる子供さんに様々な影響を残すことがあり、胎児性アルコール症候群(FAS: Fetal Alcohol Syndrome)と呼ばれています。当初は出生時の低体重や奇形などに焦点があてられることが多かったのですが、現在ではADHDや成人後の依存症リスクなどより広い範囲での影響がみられることが分かっており、胎児性アルコール・スペクトラム(FASD: Fetal Alcohol Spectrum Disorders)と呼ばれることもあります。

診断基準は「1. 妊娠中の母親の飲酒」「2. 特徴的な顔貌」「3. 出生時低体重・栄養とは関係ない体重減少、身長と釣り合わない低体重などの栄養障害」「4. 出生時の頭囲が小さい・小脳低形成・難聴・直線歩行困難などの脳の障害」となっています。
頻度は民族や集団によって大きく異なりますが「出生数1000人あたり0.1-2名」とされ、非遺伝性の精神発達遅滞の最多の原因となっています。

胎児性アルコール症候群は飲酒量に比例してリスクも増え、大量飲酒者である女性アルコール依存症の子供さんに対する調査では、妊娠中飲酒したケースの30%にみられたとする報告もあります。一般人口を対象にした調査でもビール1.5リットルに相当する1日60g以上のアルコールを妊娠初期に飲酒していたお母さんから生まれた子供さんでは、体重や頭位が明らかに小さいことが示されています。また大量に飲まなくても少量飲酒での胎児性アルコール症候群の報告例があるように、胎児性アルコール症候群の閾値はわかっておりません。また同量のアルコール摂取量であっても少量・長期間の飲酒よりも、短期間であっても大量の飲酒がリスクが高く、また妊娠後期より初期のほうがリスクが高いと考えられていますが、成長障害や脳の障害は妊娠中期から後期の飲酒が影響しているとされており、基本的には妊娠全期間を通して何らかの影響が出る可能性があります。

また特異的顔貌や低体重などは成長とともに次第に目立たたなくなってきますが、ADHDやうつ病などの精神科的問題が後年明らかになってくることがあります。
胎児性アルコール症候群には治療法はないため、唯一の対処法は妊娠中飲酒しないことです。日本では妊娠中の女性の飲酒率は8.7%(平成22年/2010年)となっていますが、「健康日本21」では平成26年(2014年)までに0%にすることを目標に掲げました。一方で妊娠可能年代の女性は他の年代に比べ飲酒率が高く、かつ若い女性の飲酒率は増加傾向であり、今後の問題悪化が懸念されます。

Fetal Alcohol Syndrome

Fetal Alcohol Syndrome

独立行政法人 国立病院機構 久里浜医療センター 教育・情報部長 真栄里 仁

参考文献

  1. 黒滝直弘, 中根允文.
    胎児性アルコール症候群.
    小児内科,35 : 224-226, 2003.