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女性の飲酒と健康

女性の飲酒は近年一般的になってきましたが、女性の飲酒には「1. 血中アルコール濃度が高くなりやすい」「2. 乳がんや胎児性アルコール症候群などの女性特有の疾患のリスクを増大させる」「3. 早期に肝硬変やアルコール依存症になり易いなど」特有の飲酒リスクがあります。

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今では考えにくいことですが、昔は女性が飲酒することはあまり一般的ではなく、1954年に国税庁が実施した「酒類に関する世論調査」では、女性の飲酒者は13%に過ぎませんでした。しかし女性の社会進出とともに女性の飲酒も普通になり、2008年に行われた全国調査では、20代前半の年代ではついに女性が男性を上回ってしまいました。この傾向は未成年でも見られ、男女差は調査ごとに縮小してきており中学生で差がほとんどなくなっています。

一方で女性は肝硬変の患者年齢が男性より10歳以上も若く、飲酒量も半分程度であるなど、多くの研究で女性の身体はお酒に弱いことが示されています。
この原因のひとつとして、女性では血中アルコール濃度が高くなる傾向があることが考えられています。血中アルコール濃度はアルコールの代謝能力や体内の水分量に影響されますが、女性は体内の水分量が男性より少ないため、同じ体重・同じ飲酒量であっても血中アルコール濃度が高くなります。またアルコールの代謝能力も平均すると男性の3/4程度しかありません。そのため過度の酩酊のリスク、特に急性アルコール中毒のリスクも高くなります。

また女性の中で最も多いがんである乳がんも飲酒と関係があります。乳がんのリスクとして、女性ホルモンや運動不足・肥満など様々な要因が知られていますが、アルコールもそのひとつで飲酒量に比例して乳がんのリスクが直線的に上がります。
高齢女性で大きな問題となっている骨粗鬆症でも、多量飲酒は骨密度を減少させ骨粗鬆症や骨折の原因となります。

このような様々な研究結果から、女性の飲酒量は一般的に男性の半分から2/3くらいにするのが安全とされており、「健康日本21」でも生活習慣病のリスクが高まる飲酒量を女性では男性の半分の「一日の純アルコール摂取量20g以上」としています。リスクの少ない飲酒量としては、これより確実に少ない量となる10g程度に抑えることが好ましいでしょう。

ただし少量であったとしても妊娠中の女性は飲酒を避けるべきです。妊娠中の女性が飲酒すると、生まれてくる赤ちゃんに体重の減少・顔面などの奇形・脳の障害など、さまざまな悪影響が出てくる可能性があり、胎児性アルコール症候群(FAS)と言われています。

またアルコール依存症の女性についても、少量でも飲酒すれば短期間で元の飲みかたに戻ってしまうため、完全に断酒することが必要です。女性のアルコール依存症は昔はまれでしたが年々増加し、いまでは依存症全体の約2割を占めると推測されています。
女性のアルコール依存症には「1. 短期間で依存症となり、患者年代のピークが30代と若いこと」「2. 摂食障害やうつ、自殺未遂など様々な精神的問題を抱えていることが多いこと」「3. 配偶者の大量飲酒や家庭内暴力など、環境に大きく影響されること」「4. 自責感が強い」などの特徴があります。そのため断酒教育と並行して「家族関係の調整」「うつ病などの重複障害の治療」「自己効力感の向上」などにも焦点を当てた介入や治療が必要です。

年齢・性別の現在飲酒者の割合[2]

年齢・性別の現在飲酒者の割合

独立行政法人 国立病院機構 久里浜医療センター 教育・情報部長 真栄里 仁

参考文献

  1. 真栄里仁, 松下幸生, 樋口進
    女性のアルコール依存症.
    日本医師会雑誌, 第140巻第9号, p1890-1894, 2011.
  2. 樋口ほか
    厚労科学研究報告, 2009.