若者の飲酒は、急性アルコール中毒やアルコール依存症等のリスクが高く、事件・事故の関連も深いという特徴があります。若者のアルコール関連問題の対策としては、飲酒禁止年齢を用いた対策が効果的です。
若者の酒離れが言われるようになって久しいですが、実際にはどうなっているのでしょうか?
未成年者の飲酒については、1996年から4年ごとに未成年者の飲酒状況の全国調査が行われており、過去1カ月間に飲酒をした経験のある未成年者は減少してきています【図1、図2】[1][2]。飲酒による補導者数も減少傾向にあり[3]、未成年者の飲酒は改善傾向にあることが示されています。また、20代の習慣飲酒率でみても、男性では大きく減少(わが国の飲酒パターンとアルコール関連問題の推移参照)しているなど、若者の酒離れがデータとしても示されています。
アルコールは200以上の疾患と関連があるといわれていますが、その中でも若者の飲酒と最も関連の深い疾患として、急性アルコール中毒と、アルコール依存症があります。
図1.中学生飲酒経験率推移[1][2]より作成
図2.高校生飲酒経験率推移[1][2]より作成
これ以外にも、脳の萎縮や第二次性徴の遅れ等、多くの領域でアルコールによる若者の健康への悪影響がみられます。
若者の飲酒の大きな問題として、事件・事故につながりやすいということがあります。成人の場合、飲酒量と死亡率との間では、一定量の飲酒量までは死亡率が下がるいわゆるJカーブを示す関係が見られますが、未成年を主な対象とした若年者の飲酒と死亡率の調査では、若年期の飲酒量に比例して右肩上がりで死亡率が上昇することが報告されています【図3】[8]。また警察庁の飲酒運転事故調査では、飲酒運転処罰の対象とならない低い呼気アルコール濃度を示した違反者の割合は若者で高くなっており【図4】[9]、若年層では少量の飲酒でも事故につながりやすいことを示しています。
このように若者の飲酒運転はリスクが高いことから、アメリカ合衆国やニュージーランドなどでは若者の飲酒運転のアルコール濃度基準を成人より厳しく設定しています。
図3.18~20歳の1日当たり飲酒量と疾患別死亡リスクの関係[8]より作成
図4.飲酒運転事故酩酊程度別分類[9]より作成
若者の飲酒問題に対しては各国で様々な対策が行われていますが、決定的なものはありません。ただ、飲酒禁止年齢を用いた対策については、広くコンセンサスが得られており、アメリカ合衆国では各州によって異なっていた飲酒禁止年齢を引き上げて統一したことで若者の死亡事故が減少しています[10]。世界保健機構(WHO)でも報告書の中で、酒類購入可能年齢の引き上げは若者のアルコール関連問題、特に飲酒運転事故の減少につながるとしています[11]。
日本でも健康日本21(第二次)の中で未成年者飲酒をゼロにすることが目標として掲げられているように、未成年者飲酒防止は飲酒問題対策の大きな柱となっています(「健康日本21におけるアルコール対策」参照)。一方成人年齢の引き下げもあり、近年、飲酒禁止年齢についても議論が行われるようになってきていますが、これは世界の潮流や、アルコール関連問題防止のエビデンスに反するものであり、今後、慎重な議論が必要です。
(最終更新日:2021年8月30日)