厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト

e-ヘルスネット

災害とこころの健康

災害は大きな心理的な負担を与えるのため、人が心身の変調を感じることは正常な反応ともいえます。しかしなかにはうつ状態・PTSDなどの精神症状や、飲酒や喫煙などの健康問題が増えることもあります。その際には適切な医療サービスや周囲の人からの支え(ソーシャルサポート)を得てこころのケアに配慮することが重要です。

twitterでシェアする

facebookでシェアする

日本は地震・台風などの自然災害を多く経験しています。特に1995年の阪神・淡路大震災以降は、こころのケアの重要性が一層認識されて、災害後に多くの予防や治療的関わりが行われています。

災害は多くの住民にとって予期しない出来事であり、大きな心理的な負担を与えます。災害によって家財を失ったり、親しい人に犠牲がでたり、生活に大きな変化や、将来の生活へ不安がもたらされることがあります。このようなこのような重大な出来事のあとで心身の変調をきたすことは人間の正常な反応ともいえます。

多くの場合には生活の再建とともにこころの健康も回復していくのですが、なかには精神的な影響が長く続いたり、精神疾患の診断がつくこともあります。これらの診断として、うつ病・不安障害・心的外傷後ストレス障害(PTSD)が挙げられます。他にもストレスへの対処行動として、飲酒や喫煙の増加がみられることもあります。
高齢者や子どもは災害弱者といわれますが、高齢者では身体症状の増加や、子供の場合にも頭痛・腹痛・身体各部の痛みなどの身体の不調、気持ちが落ちこみ、またお漏らし・指しゃぶり・保護者へのべたつき(だっこ・おんぶ)といった退行現象(赤ちゃん返り)が見られることがあります。これらの反応は、恐怖を感じたり不安な状況がもたらす心身の反応であり、異常なことではありません。安全を確保して安心感を与えることで、多くは回復していきます。

被災後に実際に不安定になっている人びとを見つけた場合にも多くの場合には直ちに医学的な対応をすることは困難な場合があります。そのような時には、災害の後で新たに生じた不安・落ち込み・苛立ち・焦りなどは、誰にでもあることで多くは一時的なことを伝えて落ち着いて様子を見ること、しかし程度がひどくなった場合には、迷わずに電話相談や相談室などを利用するように伝え、精神的な援助を受けられる体制を確認することが必要です。
特に不眠が続いたり、パニック・興奮・放心などが強い場合には、できるだけ早期に専門家に相談するように勧めます。これは災害だけが原因ではなく、災害の前に別の強い衝撃があったり(家族の事故など)、何らかの精神疾患があったり、あるいは始まりかけていたという場合もあるからです。このような精神的な変化は、体の不調とあわせて生じることもあるので、身体医療のなかでもこころのケアに配慮した対応をする必要があります。

このようにこころのケアは、精神や一般の保健・医療体制のなかで対応されますが、それと同様に重要なことは、周囲の人からの支え(ソーシャルサポート)を得ることです。このような支えは災害後のこころの状態に対して、保護的に働くことが研究からも明らかになっています。

独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 成人精神保健部 鈴木 友理子