心的外傷後ストレス障害(Posttraumatic Stress Disorder)の略です。生死に関わるような体験をし、強い衝撃を受けた後で、その体験の記憶が当時の恐怖や無力感とともに、自分の意志とは無関係に思い出され、まだ被害が続いているような現実感を生じる病気です。日本の総人口の1.3%に生じるとされ、それほど珍しくない病気といえます。3カ月以内に半分以上の方が自然回復するものの、1年以上経っても一定数の方は自然回復しないとする研究もあります。持続エクスポージャー療法(認知行動療法)やSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの薬で治療することができるようになってきました。
災害は大きな心理的な負担を与えるため、人が心身の変調を感じることは正常な反応ともいえます。しかしなかにはうつ状態・PTSDなどの精神症状や、飲酒や喫煙などの健康問題が増えることもあります。その際には適切な医療サービスや周囲の人からの支え(ソーシャルサポート)を得て、こころのケアに配慮することが重要です。
交通事故重傷者のおよそ3割が、約1ヵ月後にうつ病やPTSDなどの精神疾患を発症します。精神疾患の発症を予防することを目的にした研究や、事故後の精神疾患が怪我の回復やリハビリにどう影響するかを調べる研究が期待されています。
DV被害によって被害者とその子どもには様々な心身の健康障害が引き起こされることがわかっています。例えば被害者には直接的な暴力による怪我の他にも慢性身体疾患への罹患、うつ病やPTSD・アルコール乱用・薬物乱用などが起こり得ます。周囲の人たちには被害者とその子どもの状態を理解し、長い目で援助していく視点が重要です。
犯罪被害は強い衝撃をもたらします。被害直後の不安や混乱は時間の経過とともに軽減していきますが、ASD・PTSD・うつ病などを発症する場合も少なくありません。これらの疾患や被害による認知の変化から、社会生活機能が障害されることもあります。被害者の回復のための支援が必要です。現在日本では警察や民間被害者支援団体などの支援窓口がつくられ、犯罪被害者等基本法に基づいて被害者支援が推進されてきています。
開示すべきCOIはありません。