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PTSD

生死に関わるような体験をし、強い恐怖とそこから逃れることができないという無力感を体験した後、その記憶が恐怖とともによみがえる現象がPTSDです。しかし半年以内に8割程度が回復しますし、エクスポージャー療法(認知行動療法)やSSRIなどの薬で治療することができるようになってきました。

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災害や事故・犯罪被害などで、「もうこのまま自分は死んでしまう」「どうすることもできない」ことを実感して強い恐怖を体験した後で、その記憶が何度も思い出され、そのときに連れ戻されたような感じがして、同じ恐怖がよみがえってくることがあります。これを再体験症状と呼びます。
多くの場合それは正常なことでで2-3週間のうちに落ち着いてくる方が多いのですが、これが1ヶ月以上続いて、どきどきしたり物音に敏感になったり、いらだった感じ(過覚醒症状)や現実感が無くなって感情が麻痺したり、自分の体験が遠い出来事のように思ったり、事件を思い出させるものに近寄れなくなる(回避・麻痺症状)という症状がそろうと、PTSDという診断がつきます。正式には外傷後ストレス障害といいますが、外傷というのは身体のけがのことではなくて心のトラウマのことです。PTSDになったとしても、3分の2程度は半年以内に自然に治ります。

トラウマとなるような被害を受けた場合あるいはPTSDを発症した場合、ひどく動揺したり大変つらい気持ちになります。そのような人に対して、支えになるような人がいることは、大きな助けになります。支えというのは批判せずにその人の気持ちを受け止めること、被害に伴う手続きや生活のストレスを助けてあげることです。具体的には警察や病院に行くことや、職場や学校への報告、被害者がお母さんの時には子どもたちの世話などを助けてあげることです。
被害者に接するときの原則は「三つの安らぎ」、つまり安全・安心・安眠を保証することです。もう被害に遭うことがないこと、助けになる人がいること、ゆっくりと眠れる場所を提供すること(医者から寝るための薬をもらうのも良いでしょう)が大切です。お酒やコーヒー、喫煙が増えないように気をつけてください。

被害を受けた後はPTSDだけではなく、うつ病・不安障害・外出恐怖など、様々な形で精神のバランスが崩れます。ですから誰かが心の状態に気をつけてみてあげることが必要です。PTSDをはじめ、これらの状態には薬が効くことも多いので、勇気を出して精神科や心理士に相談をしてみてください。PTSDの治療としては、SSRIなどの抗うつ薬を中心とした薬物療法と、2時間のカウンセリングを10回ほど続けるエクスポージャー療法が、有効であるとされています。

日本で一生の間にPTSDになる確率は、1~3%程度と思われます。その多くが自然に治っているとしても、治療を必要としているのに受けておられない方がたくさんおられます。何年間もPTSDで苦しまれた方が、治療を受けることで治る場合も少なくありません。自分一人だけの問題と思わずに、治療を受けられることをお勧めいたします。

独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 成人精神保健部 金 吉晴

参考文献

  1. 金吉晴編
    心的トラウマの理解とケア
    じほう, 東京, 2006.
  2. 金吉晴, 原恵利子訳.
    PTSD薬物療法アルゴリズム.
    メディカルフロント・インターナショナル, 東京, 2007.