うつ病などの様々な心の病に対する有効性が医学研究で立証されている心理療法。
近年、様々な心の病に対して、薬物療法だけではなく心理療法(精神療法)の有効性が、信頼すべき医学研究により立証されつつあります。中でも認知行動療法(認知療法)は、うつ病、パニック障害、強迫性障害、統合失調症に対する治療効果が、繰り返し確認されています。
認知行動療法は、ある状況に出くわした時に、私たちが持つ感情と行動が、その状況をどうとらえるか(認知)によって影響を受けることに着目します。
例えば、うつ病で起こるとらえ方は、「100点でなければ、60点とれていても0点と同じだ」といった評価や、「Aが駄目だと、BもCも駄目に違いない」という推測を下しがちです。その結果、気分が落ち込み、何かをやろうという気持ちが失せてしまいます。一方、健康な時なら、「マイナスが40点あるけれど、プラスも60点ある」、「Aは駄目だが、Bはまあまあで、Cは出来ている」といった考え方、すなわち、ものごとの良い面と悪い面の両方を現実的にとらえる見方が出来ます。
患者さんの感情や行動に影響を及ぼしている極端なとらえ方(歪んだ認知)を、治療者と患者さんが共同で確認していくことが、認知行動療法の第一歩です。最終的に、患者さんが、より現実的で幅広いとらえ方(認知)を自分自身によって選択できるようになることで、必要以上に落ち込んだり、不安になったりするといった不快な感情を軽くして、ご本人が本来持っている力を発揮できることを目指します。
うつ病やパニック障害の場合、認知行動療法で改善した患者さんは、薬で治療した方と比べて、再発することが少ないことがわかっています。また、認知行動療法の効果にも、脳の変化が関わっていることも解明されつつあります。