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ドメスティック・バイオレンス / DV(どめすてぃっく・ばいおれんす)

家庭内暴力とも呼ばれる。家族の間で行われる身体的または精神的虐待行為のことであるが、日本では、「配偶者や恋人など親密な関係にある、またはあった者から振るわれる暴力」という意味で使用されることが多い。

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ドメスティック・バイオレンスとは、同居する近親者から受ける暴力行為のことですが、日本では、主に「配偶者や恋人など親密な関係にある、またはあった者から振るわれる暴力」という意味で使用されています[1]。恋人からの暴力行為については「デートDV」と呼ばれることがあります。

DVでは、身体的暴力(殴る・凶器を用いた脅し)、精神的暴力(暴言・無視)、経済的な制限(生活費をわたさない・仕事の制限)、性的な暴力(性行為や中絶の強要)などの行為があります。

DVでは、加害者からの脅しによる恐怖だけでなく、被害者の経済的な問題や、自分の仕事や子どもの教育環境の維持、また暴力を受け続けたことによる無力感や、相手が変わってくれるかもしれないという期待感などからなかなか関係を切ることができず、暴力が長期にわたって維持されてしまうこともあります。また、恥ずかしさや暴力としての認知の不足、周囲からの否定的な言動(夫婦間の問題、あなたが悪いなど)のためになかなか助けを求められないということもあります。

DVの長期に渡る暴力のため、被害者は身体的なけがだけでなく、うつ病や心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの精神疾患に罹患することもあり、深刻な精神的影響を受けます。また、親の暴力を目撃した子どもにもPTSDなど精神的影響が現れることも報告されており、早く暴力から抜け出し、ケアや治療に結びつくことが必要です。

2001年に「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法、配偶者暴力防止法)」が公布され、全国の都道府県に配偶者暴力相談支援センターが設置され、被害者の相談や安全の確保(一時保護など)、自立の支援などを行うようになっています。また、被害者からの申し立てにより、裁判所では接近禁止命令や退去命令を行い、被害者の安全の確保を行います。

被害者はけがなどで医療機関を受診することも多いのですが、その際医師やその他の医療関係者が、配偶者からの暴力であることを確認した場合には、被害者の意思を尊重したうえで、配偶者暴力相談支援センター、警察官に通報することが求められています。

(最終更新日:2021年1月12日)

中島 聡美

中島 聡美 なかじま さとみ

武蔵野大学 人間科学部 人間科学科 教授

1993年筑波大学大学院医学研究科博士課程卒業。93年北の丸クリニック常勤医師、同理事長、96年常磐大学国際学部専任講師、2000年同コミュニティ振興学部助教授、03年国立・精神神経センター精神保健研究所成人精神保健部成人精神保健室長、05年同犯罪被害者等支援研究室長、16年福島県立医科大学ふくしま国際医療科学センター放射線医学県民健康管理センター特命准教授を経て、18年より現職。専門は精神医学、被害者学。

参考文献

  1. 内閣府男女共同参画局.
    ドメスティック・バイオレンス(DV)とは
    http://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/dv/index.html