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アルコールと認知症

アルコール依存症および大量飲酒者には脳萎縮が高い割合でみられること、大量に飲酒したりアルコールを乱用した経験のある人では認知症になる人が多いといった疫学調査結果から、大量の飲酒は認知症の危険性を高めることが示されています。一方で少量ないし中等量の飲酒は認知症の原因にはならないのみならず、認知症の予防になる可能性があります。

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1. アルコールの脳への影響について

以前から大量に飲酒する人には脳が小さくなる脳萎縮が高い割合でみられることは知られていましたが、最近の調査によれば、飲酒量と脳萎縮の程度には正の相関が見られることが報告されています。すなわち飲酒量が増えるほど脳が萎縮するということです。一方で飲酒による脳萎縮は断酒することによって改善することも知られています。萎縮以外の影響としては、アルコールが加齢による記憶・学習低下を促進することが動物実験では証明されています[1]

2. 大量飲酒と認知症について

施設に入所している認知症の高齢者の29%は大量飲酒が原因の認知症と考えられたという調査結果があります[1]。また別の調査では、過去に5年間以上のアルコール乱用または大量飲酒の経験のある高齢男性では、そのような経験のない男性と比べて認知症の危険性が4.6倍、うつ病の危険性が3.7倍と報告されています[1]。このように大量の飲酒は、認知症の危険性を高めることが示されています。

3. 少量ないし中等量の飲酒と認知症について

高齢者の飲酒と認知症の危険性(リスク)に関する調査結果を図1に示します。
【図】の飲酒量は350mLのビール1本相当(1.4ドリンク)を1本としています。また認知症の危険性とは、飲酒しない人が認知症になる危険性を1とした場合に、各飲酒量でどの程度認知症の危険性が増減するかということを示します。
このように1-6本程度の飲酒が認知症の危険性が最も低いという結果で、飲酒しないまたは大量飲酒する人より少量飲酒する人のほうが認知症の危険性を下げる、言い換えれば少量飲酒は認知症の予防になる可能性を示唆しています[2]

一方で若い頃の飲酒と認知症の関係を調べたフィンランドの調査では中年の頃の飲酒を非飲酒・低頻度飲酒(月に1回未満)・高頻度飲酒(月に数回以上)に分類して高齢になってからの認知症の有無を調べたところ、低頻度飲酒と比べて軽度認知障害の危険性が非飲酒では2.2倍、高頻度飲酒では2.6倍高くなることが示されました[1]
またハワイの日系人男性の調査では、中年時代の非飲酒者と大量飲酒者(1日に350mLのビール4本相当を越える飲酒量≒5.7ドリンク)で高齢になった時の認知機能が最も低下しており、逆に1日にビール1本相当以下の飲酒量で最も認知機能の低下が少なく、少量ないし中等量の飲酒は高齢になって認知機能が低下する危険性を22-40%下げるという結果でした[1]
これらの調査結果をまとめると、大量の飲酒は認知症の危険性を高める一方で、少量の飲酒は認知症を予防する可能性が示されているということになります。

以上、アルコールと認知症について解説すると、大量の飲酒は認知症の原因となりますが、少量ないし中等量の飲酒は認知症の危険性には関係しない、または予防する可能性があるということが示唆されています。しかしご注意いただきたいのは、元々飲酒する習慣がない人が飲酒した場合に認知症を予防するという証拠はどこにもないということです。

参考文献

  1. 松下幸生, 丸山勝也.
    アルコール依存と認知症.
    からだの科学 251: 39-44, 2006.
  2. Mukamal KJ, Kuller LH, Fitzpatrick AL et al.
    Prospective study of alcohol consumption and risk of dementia in older adults.
    JAMA, 289:1405-1413, 2003.