健やかな睡眠があってこそ十分な休養をとることができます。
現代生活はシフトワークや長時間通勤・受験勉強・インターネットやゲームをしての夜型生活など、睡眠不足や睡眠障害の危険で一杯です。睡眠不足による産業事故、慢性不眠によるうつ病や生活習慣病の悪化など、睡眠問題を放置すると日中の心身の調子にも支障をもたらします。
私たちは人生の3分の1を眠って過ごします。最も身近な生活習慣である睡眠にもっと目を向けてみませんか。
質の高い眠りは心身の休養のために欠かすことができません。しかし現代社会は、シフトワーク(交代勤務)の増加・通勤や受験勉強をこなすための短時間睡眠・夜型生活の増加など、睡眠や体内時計の変調を引き起こすさまざまな要因で溢れています。
先に平成18年社会生活基本調査の結果が発表されました。日本人の睡眠時間は平均7時間42分で、過去20年間にわたり減少を続けています。特に40代・50代の働き盛りの年代層の睡眠時間は7時間そこそこであり、週末に平日より1時間ほど長く眠ることで何とか睡眠不足の帳尻を合わせているようです。また女性で睡眠時間が短いのが目立ちます。子供たちの遅寝や睡眠不足が学習能力や情緒形成へ及ぼす悪影響も懸念されています。仕事・学業・家庭生活を含め、日常生活と睡眠・休養のバランスをどのように保って健康生活を送るか、私たちの知恵が試されています。
次章以降にある「快眠のためのテクニック」「快眠と生活習慣」では日常生活において出来る限り健やかな睡眠を確保するためのテクニックを紹介しています。
睡眠不足だけが睡眠問題ではありません。睡眠の病気(睡眠障害)が増加しています。睡眠障害の種類は100種類近くもあり、不眠症や睡眠時無呼吸症候群をはじめとする日本人でもよくみられる数多くの睡眠障害があります。快眠のための試みが有効でないとき、不眠や日中の眠気が1ヶ月以上続くとき、何らかの睡眠障害に罹患している可能性を考えて下さい。「睡眠と健康」では不眠や日中の眠気をもたらすさまざまな睡眠障害について解説しています。
睡眠不足や睡眠障害による休養不足は人間の精神と身体に悪影響をもたらします。例えば短時間睡眠や不眠が続くと、強い日中の眠気・作業能率や注意力の低下・抑うつなどが出現し、結果的に人為的ミスの危険性を増大させます。
アラスカでのタンカー事故、スペースシャトル・チャレンジャーの爆発、スリーマイル島での原発事故など勤労者の睡眠問題が原因となった大きな産業事故が幾つも知られています。
日本でも過酷な勤務条件による長距離ドライバーの居眠り運転や、睡眠時無呼吸症候群を患っている新幹線運転士の居眠りによる緊急停止事故などが問題になりました。このような睡眠問題によって生じる経済・社会資本の損失は米国・日本ともに年間数兆円に上ると試算されています。
睡眠は休養に必須であるだけではなく、記憶・気分調節・免疫機能の増強など、さまざまな精神機能や身体機能に関連しているとされます。健やかな睡眠を保つことは活力ある日常生活を送るための基本であるといえましょう。
睡眠問題は万病のもとです。
「健康日本21」では様々な精神疾患と身体疾患の予防の観点から健やかな睡眠と休養を確保することを推奨しています。
睡眠障害は多くの精神疾患でもっともよく認められる症状の一つです。ただし単なる合併症ではありません。例えばうつ病では他の症状に先駆けて不眠が出現することが多く、うつ病の発症や再発を予見する症状として注目されています。また長期に持続する不眠によってうつ病へ罹患しやすくなることも知られており「たかが不眠」と放置せず適切に対処する必要があります。近年、各地で不眠を指標にしたうつ病の早期発見の試みが行われています。