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快眠のためのテクニック -よく眠るために必要な寝具の条件と寝相・寝返りとの関係

睡眠をとりまく環境を整えることは快眠のための必須条件です。寝床内環境をつくる寝具選びは、よく眠るために重要なポイントとなります。首や肩に無理のない枕・適度な硬さのマットレスや敷き布団・フィット感のある掛け布団といったように、体への負担が少ない寝姿勢(寝相)を保つことができ、保温性と吸湿性・放湿性が良い寝具を選ぶとよいでしょう。

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睡眠をとりまく環境

睡眠をとりまく環境

快眠のために重要になるのが、睡眠をとりまく環境です。良い眠りを得られるかどうかには、体や心の状態が大きく作用することはもちろんですが、寝床内環境をつくる寝具(枕・マットレス・布団)や寝室の温度/湿度・音・光、などの寝室環境を整えることで、寝つきが悪い、夜間によく目が覚めるといった不眠などが改善される方も多いと思われます。ここでは、主に快眠のために重要な寝床内環境をつくる「寝具」と「寝相・寝返り」についてお伝えします。

よく眠るために必要な寝具の条件

保温と良い寝相

寝具には、寝ているときの保温と、良い寝相(立ち姿勢に近く体への負担が少ない姿勢)を保つというふたつの大きな役割があります。私たちの体は体内時計の働きから眠ると体温が下がりますが、これは深い眠りを保つために体内から熱を出すためで放熱が起こっています。寝具はこの点を考え、吸湿性・放湿性が良く、保温性の良いことが第一条件になります。

特に、冬場の寒い季節は寝床内環境が重要になります。冬はあらかじめ毛布などで寝具内を温めておくと寝つきが良くなります。寝具が冷えていると、体温を保つために熱を産生しようと体の筋肉が縮み硬くなり、不自然な寝相になることがあります。寒さが厳しいときには、湯たんぽや電気毛布などで就寝前にあらかじめ寝床内を暖めておくと、スムーズな放熱が起こり、眠りにつきやすくなります。個人差や季節によっても異なりますが、寝床内の温度は33℃、湿度は50%の状態が最適とされます。

1. 快眠できる「枕」の高さとは

快眠できる「枕」の高さ

朝目覚めたときに首や肩がこっていたら、それは枕が合っていないせいかもしれません。枕の役割はマットレスや敷き布団と後頭部から首にかけてのすき間を埋め、立ち姿勢に近い自然な体勢を保つことにあります。このすき間は個人差が大きくそれに適した枕も人それぞれに異なるので、自分の体型に合った枕の高さを知り、安定感のあるものを選ぶとよいでしょう。

仰臥位でベッドやマットレス、敷き布団の表面から首の角度が約5度、最近の報告では約 15度の前傾で首の痛みや疲れが軽減されるという報告もありますが、頭頸部の枕への圧や頸椎の骨の並びも関連しているという報告もあります。頸部のすき間の深さは人によって異なりますが(一般に1~6cm)、この深さに合った高さの枕を選ぶと首や肩への負担が少なく眠りやすいといわれています。頸部のすき間の深さに合わない枕(高すぎる、または、低すぎる枕)を選ぶと、首や肩・胸の筋肉に負担がかかり、呼吸がしにくく寝心地が悪くなります。呼吸がしやすく、頭部をきちんと支えてくれるだけの弾性があって、発汗に備え吸湿性・放湿性の良い素材を選ぶことが大事です。枕は寝返りをして横向きになった場合も考える必要があります。肩先から側頭部全体を支えるだけの奥行きが必要です。

2. 「マットレス・敷き布団」は適度な硬さがよい

私たちの姿勢は、後頭部から首・胸にかけてと胸から腰にかけて、背骨が2つのS字カーブを描くようになっています。自然な立ち姿勢のときの腰部S字カーブのすき間は4~6cmですが、寝た姿勢でいちばん体への負担が少ないのは、すき間が2~3cmのときです。

マットレスや敷き布団が柔らかすぎる場合には、腰部と胸部が深く沈みこんでS字カーブのすき間が大きくなり、眠りにくいだけでなく腰痛の原因にもなります。反対に硬すぎると骨があたり痛みを生じる、血流が妨げられるなど、熟睡できなくなります。したがってマットレスや敷き布団には適度な硬さが必要であることがいえます。2つのS字カーブをバランス良く支えられる、自分にとって楽で快適な寝相を保ちやすいものがよいといえます。

「マットレス・敷き布団」の硬さ

3. 「掛け布団」は保温性、吸・放湿性とともにフィット感が必要

睡眠中の私たちの体からは熱が奪われやすいため、過剰な放熱・発汗による低体温を防ぐこと、さらに寝ている間にかく汗を吸収して透過させる吸湿性・放湿性があることも掛け布団に必要な条件となります。また睡眠中の寝返りをしやすいように、軽くて体にフィット感のあるものがよいでしょう。

寝具と寝相、寝返りの関係

寝返りと良い寝相

寝相は上向きで寝ているときの方が、体に余分な力が入らず最もリラックスした状態になります。そのため上向きに寝ている時間が多いことは、寝心地の良さをあらわしているとされています。ところで私たちは床に入ったときには上向きで寝ていても、眠りに入ったあと、いつのまにか左や右、ときにはうつぶせになっています(寝返り)。

寝返りは、睡眠中に同じ体の部位が圧迫され続けることで、その部位の血液循環が滞ることを防ぎ、体の負担を和らげるために生理的におこなわれる体の動きなのです。そのほか寝返りには体温を調節する・寝床内の温度を保つ・熱や水分の発散を調節するといった働きがあります。快適な寝相で眠っていれば寝返りの回数も少なくてすみますが、体が沈みこんでしまうような柔らかすぎる布団や、骨などを強く圧迫するような硬すぎる布団では、体の負担を減らすために寝返りの回数も多くなってしまいます。

(最終更新日:2023年07月06日)

有竹 清夏

有竹 清夏 ありたけ さやか

埼玉県立大学大学院保健医療福祉学研究科 教授

東京医科歯科大学医学部保健衛生学科卒業、同大学院博士後期課程修了。博士(保健学)。米国認定睡眠検査士(RPSGT)。日本睡眠学会幹事、日本時間生物学会評議員、日本睡眠検査学会評議員などを務める。国立精神・神経医療研究センター研究員、日本学術振興会PD、ハーバード大学医学部リサーチフェロー、早稲田大学、東京大学を経て現職。厚生労働省研究班の研究分担者。不眠の時間認知機能、運動の放熱および睡眠にもたらす効果、女性の更年期および月経周期と睡眠問題の関連について研究を行う。

参考文献

  1. 独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター(精神保健研究所・精神生理部)
    http://labo.sleepmed.jp