うつ病治療の基本薬で、現在は副作用の少なさを考え、SSRIやSNRIが主に使われている。
抗うつ薬は、脳の中のセロトニンやノルアドレナリンといった物質に対する働きを持ち、治療薬としてうつ病に主として使われますが、パニック障害などにも治療効果を持っています。抗うつ薬には様々な種類があり、昔は三環系抗うつ薬と呼ばれるタイプが主でした。しかし、「口がかわく、便秘、尿が出づらい、目がかすむ、ふらつく、眠気がする」といった副作用が強いので、最近はSSRIやSNRIといった副作用の少ない抗うつ薬が主流になっています。少なくなったとは言え、SSRIでは吐き気、SNRIでは尿閉といった副作用が起こる場合があります。
抗うつ薬は、のみ始めてすぐには効果が現れず、しばらく服用を続けていると徐々に効果が現れるという特徴があります。一方、副作用は、一般にのみ始めから現れ、やがて治まっていきます。のみはじめは、「効かないのに、副作用ばかり出る」といったことが起こりえます。薬に関する心配事がある時にはきちんと担当の医師に話して、どうするのがよいか相談しましょう。
また、例えば、糖尿病の患者さんが、「甘い物が好きだから、甘い物を食べながら治療を受けたい」と考え、生活習慣を変えずに糖尿病の薬を服用しても効果は期待できません。同じように、うつ病も過度のストレスがかかった状態のままでは、せっかく抗うつ薬をのみ始めても十分な効果は期待できません。治療効果がしっかり現れるには、これまで一人で抱えてきた負担をいったん軽くして、十分な心の休息をとることが大切です。
抗うつ薬には、悪くなった状態を良くする効果と、良くなった状態を維持する効果があります。この効果を利用して、初めてうつ病になった方で、職場などに復帰した後もおよそ半年間は薬の服用を続けていただくのが一般的です。すでに、うつ病の再発を何回か繰り返した患者さんや、まだ症状が残っている患者さん、重症のうつ病と診断された患者さんでは、1~3年にわたって治療を継続する場合があります。
抗うつ薬の維持療法をどのくらい続けるかについて、医師と十分に相談していただくことが重要です。