栄養成分表示は、社会的背景により食生活を考える上で、益々ニーズが高くなっています。平成27年4月1日に食品表示法が施行され、容器包装に入れられた加工食品には栄養成分表示が義務づけられました。表示義務のあるのは、熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウム(食塩相当量で表示)です。
平成30年度、消費者庁が1万人を対象にした食品表示に関する意識調査結果では、栄養成分が表示されているのを知っている者は72.4%、また、栄養成分表示を「ときどき参考にしている」、「いつも参考にしている」を合わせると、男性で60.9%、女性67.9%でした。「栄養成分の量及び熱量(栄養成分表示)」を確認する理由については、「摂取する食品に含まれる熱量や成分の量を知るため」が 51.9%と最も多く、次いで「必要な栄養素をバランスよく摂取するため」が40.5 %、「体重管理のため」が28.4%、「生活習慣病予防のため」が 27.5%であり、栄養成分表示は食物選択を行う上で大きな役割を果たしています。
この制度は、販売する食品に邦文で栄養成分などの表示を行う場合、その成分や熱量だけでなく国民の栄養状況からみた重要な栄養成分についても表示を義務づけています。栄養成分表示をする場合、「1. 熱量」「2. たんぱく質」「3. 脂質」「4. 炭水化物」「5. ナトリウム(食塩相当量で表示)」「6. 栄養表示された栄養成分」の順序で含有量を表示します。
また表示誤差については、栄養成分および熱量ごとに範囲が決められています。栄養成分・熱量などの強調表示を行う場合、補給できる旨の表示(「含む」「供給」「豊富」「高」などの表示)や、適切な摂取ができる旨の表示(「無」「ゼロ」「低」「ひかえめ」などの表示)をする場合には、成分が一定以上または以下の含有量であることと基準が定められています。例えば糖質の場合、食品100ml(100g)当たり0.5g以上含まれていなければ『糖質ゼロ』と表示することが可能になります。
さらに健康への関心の高まりの中で、特定の栄養成分を摂取することを目的にした錠剤、カプセルなどの形状の食品(いわゆる健康食品)が販売されるようになりました。そのため国は一定要件を満たす食品を「保健機能食品」とし、目的や機能の違いにより個別に許可が必要(個別許可型)な「特定保健用食品」と、規格基準に適応していれば許可不要(規格基準型)、「栄養機能食品」、「機能性表示食品」の制度を創設しました【図】。
特定保健用食品(条件付き特定保健機能食品を含む)は、食品の持つ特定の保健の用途を表示し販売される食品です。販売には、製品ごとに食品の有効性や安全性について審査を受け、表示について消費者庁の許可をうけます。2005年2月以降には有効性に関する科学的根拠の許可基準が緩和され、「条件付き特定保健用食品」と「規格基準型特定保健用食品」「疾病リスク低減表示」が追加されました。
「条件付き」とは限定的な科学的根拠である旨の表示を認めるもの、「規格基準型」とは許可実績があり個別審査を行わなくても許可できるものです。「疾病リスク低減表示」は医学的・栄養学的に確立されている場合に表示可能なもので、現時点ではカルシウムと葉酸が該当しています。
「栄養機能食品」は、通常の食生活を行うのが難しく1日に必要な栄養成分がとれない場合に、補給・補完のために利用する食品で、1日当たりの摂取目安量に含まれる栄養成分量の上限・下限値の規格基準があります。栄養機能食品表示の対象となる栄養成分は、現在ミネラル類6種類・ビタミン類13種類、脂肪酸1種類であり、規格基準に合っていれば許可申請や届出は不要で自主的責任のもと販売できます。
機能性表示食品は、安全性及び機能性に関する一定の科学的根拠に基づき、食品関連事業者の責任において疾病に罹患していない者に対して、健康の維持・増進に資する特定の保健の目的(疾病リスクの低減に係るものを除く)が期待できる旨を容器包装に表示できる食品です。特定保健用食品の許可制とは異なり、届出制です。
(最終更新日:2021年3月9日)