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今日の健康問題・食料問題に対応し、食生活の方向を示す「食生活指針」

今日の私たちの食生活に関連しては、「健康問題」や「食料問題」がみられます。「食生活指針」は、これらの問題に対応して、日々の食生活をどのようにしたら良いかを10項目にまとめて示しています。

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私たちの食生活は、誰もが望む健康長寿に関連するだけでなく日々の楽しみや潤いにもなる大切なものです。また、郷土料理や伝統料理あるいは行事食などの食文化は食生活に一層の豊かさをもたらします。そして、このような食生活を送るうえで、欠くことができないのが安全な食べ物の必要十分な供給です。

しかし、現実は、食生活等と密接な関連があるとされるがん・心疾患・糖尿病などの生活習慣病は大きな健康問題になっています。日々の食生活では、朝食の欠食、野菜や果物の摂取不足、食塩のとりすぎが言われ、肥満者がいる一方で女性のやせすぎもあり、さらに高齢者の低栄養がみられるなど、多様な問題があります。また、大切な食料の点では、わが国の食料自給率は低く、先進国の中で最低の水準にあります。また、食べ残しや食べ物の廃棄の問題もあります。これは、地球規模での資源問題や環境問題としても考える必要があります。

これらの問題に対応して、日々の食生活をどのようにしたら良いかを分かりやすく示したものが「食生活指針」です。10項目からなり、各項目には実践するための具体的な取組内容も示されています。平成12(2000)年3月に文部・厚生・農林水産省の3省合同により作られましたが、その後の食生活を取り巻く情勢の変化に合わせて、平成28(2016)年6月に改正されました。

図. 食生活指針の実践([1]より改変)

食生活指針の実践

 

10項目の内容は、①~②は「生活の質」の向上の観点から食生活の楽しみ等のあるべき形を示し、③では生活習慣病につながりやすい肥満や高齢者の低栄養を予防する観点から食事と運動による適正体重の維持を勧め、④~⑦は食事による栄養のバランスを整える観点から、料理レベル、食材(食品)レベル、栄養素レベルと順を追ってどのように食べたら良いのかを示しています。さらに⑧~⑨は食文化や食料問題解決の観点から「和食」に代表される日本の食文化を大切にし地域食材の利用や郷土料理・行事食などの継承を勧め、食べ残しや廃棄を減らす努力を促しています。最後に⑩では①~⑨のまとめも含め各人が食生活を振り返り、より良い食生活のために見直しを図るよう勧めています。

このように10項目を順に取り組むことで、自然に食生活がマネジメントできるよう考えられていてPDCAサイクル(マネジメントサイクル)の構成になっているのです。①でPlan(企画)、②~⑨でDo(実践)、⑩でCheck(評価)し、①に戻るAction(改善)です。

この10項目を意識して食生活を送ることが一人一人を健康に導き、結果的に社会全体の健康問題や食料問題の解決に向かうことになります。

なお、「食生活指針」が示すバランスのとれた食事の実践を簡単にするためのツールとして、平成17(2005)年には「食事バランスガイド」が作られました。1日に「何を」「どれだけ」食べたら良いのかがざっくりとわかるようになっています。また、妊娠されている方や授乳中の方を対象に、平成18(2006)年には妊娠期及び授乳期における望ましい食生活の実現に向けた「妊産婦のための食生活指針」が出されています。

(最終更新日:2019年6月17日)

近藤 今子 こんどう いまこ

元 中部大学 応用生物学部 食品栄養科学科 教授

参考文献

  1. 文部科学省, 厚生労働省, 農林水産省.
    食生活指針の解説要領
    2016.
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000128503.html
  2. 芦川修二, 古畑公, 鈴木三枝.
    食生活指針の解説 平成28年6月改定
    一般社団法人 全国栄養士養成施設協会
    2017.