厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト

e-ヘルスネット

QOLと食事

最近QOL(生活の質)という言葉を耳にされることが多いと思います。食生活についても例外ではなく「QOLを高める食事」という表現が用いられるようになりました。そこで「QOLと食事の関係」について、様々な視点からご紹介したいと思います。

twitterでシェアする

facebookでシェアする

本来人が健康的な日常生活を維持するためには、7つの健康習慣(朝食・睡眠・喫煙・間食・飲酒・運動・体重のコントロール)が必要だとされています。現在ではこのことを健康習慣の指標として、個人のライフスタイルにおける食習慣・環境・体質面等の改善を行い、QOL(生活の質)の向上を目指す取り組みがなされています。それでは食事におけるQOLの向上とは、いったい何を意味しているのでしょうか?

そもそも「食べる」という行為そのものは、「食べ物を認知する」→「食べたいと思う」→「食べ物を口に運ぶ」→「咀嚼する」→「飲み込む」といった連続の動作から成り立っています。しかしながら「食べる」ことは、単に経口的に「食物を摂取する」あるいは「栄養を摂る」という意味だけには留まりません。

「食べる」ことは精神的健康感にも大きく影響し、美味しい・楽しいといった充足感、あるいは食事を介しての家族や社会とのつながり等により、自分自身を大切にしたい、自分自身が大切にされている、という自尊感情を得ることもできます。このことは幼児期・学童期等では健全な発育の基本となり、高齢期では活動的な日常生活を支える生きがい感ともなり、活動的な高齢期(アクティブエイジング)を過ごすことが可能となります。

具体的に「QOLを高める食事」としては、「五感を刺激する食事」として、盛り付けの美しさや香り、調和の取れた味や食材料、ならびに季節を楽しむといった文化的な要素も必要となってきます。偏った食事やインスタント食品ばかりでは「QOLを高める食事」には遠くなってしまいます。

毎日の食事の中で「QOLを高める食事」をすることは現実的ではないかもしれません。ですが時には、食事の持つ「精神的な効果」についてもお考えいただくことが必要ではないでしょうか。

弘津 公子 ひろつ きみこ

山口県立大学 看護栄養学部 栄養学科 教授

博士(健康福祉学)、管理栄養士、健康運動指導士、介護支援専門員。介護保険施設等の勤務後、2007年4月山口県立大学生活科学部講師、准教授を経て、18年4月より現職。地域在住高齢者の「健康寿命延伸」のための栄養・食生活の改善、地域在住高齢者の咀嚼能力と口腔粘膜免疫との関連、アスリートの栄養教育等を研究テーマとしている。

参考文献

  1. Breslow,L.and Breslow,N.
    Health practices and disabillty;some evidence from Alameda County.
    Prev.Med.22(1): 86-95, 1993.
  2. 加瀬澤信彦
    7つの健康習慣が個人内変動に及ぼす影響.
    日本未病システム学会雑誌. 11: 81~83, 2005.
  3. 藤田美明
    在宅高齢者の栄養.
    Geriatic Med. 44: 937-941. 2006.