フッ化物利用は、歯質のむし歯抵抗性(耐酸性の獲得・結晶性の向上・再石灰化の促進)を高めてむし歯を予防する方法です。全身応用(経口的に摂取されたフッ化物を歯の形成期にエナメル質に作用させる)と局所応用(フッ化物を直接歯面に作用させる)があります。有効性・安全性に関する証拠が確認されています。
フッ化物利用は、20世紀初め米国で発見された白濁模様や褐色の色素沈着がみられる歯(斑状歯、後に歯のフッ素症)の原因調査から、天然の飲料水中のフッ化物濃度と歯のフッ素症の発現およびむし歯罹患との関連性が解明され、歯のフッ素症の発現がなくむし歯の発生が最大限抑えられる「飲料水中フッ化物濃度約1ppm」が見いだされたことに端を発します。
この自然環境に学んだフッ化物応用が、水道水フッ化物濃度調整(Water Fluoridation(以下WF): 水道水フロリデーション)で、1945年に米国・カナダの4都市で開始されました。このWFの有効性・安全性が評価・確認される過程で、歯に直接フッ化物を作用させる局所応用の研究が始まりました。現在様々なフッ化物応用が世界120カ国で利用されています。半世紀以上にわたるフッ化物応用の有効性・安全性に関する研究結果に基づき専門機関であるWHO(世界保健機関)やFDI(国際歯科連盟)なども利用を推奨し、世界各国に実施を勧告しています。
フッ素は化学的に合成されたものではなく、自然界に広く分布している元素です。土壌中に280ppm、海水中に1.3ppm含まれています。地球上のすべての動・植物にも、毎日飲む水や食べる海産物・肉・野菜・果物・お茶などほとんどの食品に微量ながら含まれています。私たちの身体(歯や骨、血液中や軟組織)にも存在しています。
フッ素元素の陰イオン(F-)の状態にあるものをフッ化物イオンまたはフッ化物といいます。厳密には、フッ化物イオンが含まれる化合物をフッ化物と呼びます。むし歯予防に用いられるフッ化ナトリウムもフッ化物で、水の中で薄い濃度で溶解している状態ではフッ化物イオンとして存在しています。
(最終更新日:2019年8月2日)