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水道水フロリデーション

水道水フロリデーションとは、むし歯を予防するために飲料水中のフッ化物濃度を歯のフッ素症の流行がなくむし歯の発生を大きく抑制する適正量(約1ppm)まで調整するという自然を模倣した方法です。現状のむし歯有病状況を半分以下にするという効果が確認されており、安全性と効果については専門機関が保証しています。

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水道水フロリデーションとは、飲料水中に存在するフッ化物の量を適正な濃度に調整し、その飲料水を摂取することによってむし歯を予防する方法です。実際には以下の3つの方法があります。

  1. 天然の適正濃度水源をそのまま利用する。
  2. 天然のフッ化物濃度が不足している場合、適正濃度までフッ化物を追加して調整する。
  3. 天然のフッ化物濃度が高すぎる場合、適正濃度までフッ化物を除去して調整する。

水道水フロリデーションの安全性および効果については、世界保健機関(WHO)米国疾病コントロール・予防センター(CDC)および世界中の各国歯科医師会など、国際的あるいは国家的な専門機関が保証しており、その普及を支持しています。

1. 飲料水中フッ化物濃度と歯のフッ素症の流行およびむし歯有病状況

米国国立公衆衛生局のディーン(Dean,T.)は、歯のフッ素症*とむし歯有病状況について、飲料水中フッ化物濃度の異なる21地域の12~14歳の約7,400名を対象に調査を行いました。

飲料水中フッ化物濃度と歯のフッ素症の流行および虫歯有病状況

その結果、【図】のように飲料水中フッ化物濃度が0.9ppm*までの地区では歯のフッ素症の流行はほとんどみられないこと、1.2ppmを越えるあたりから軽い歯のフッ素症が発現し始め、1.8ppm以上になると誰が見てもそれと気付く中等度以上の歯のフッ素症が発現していることが分かりました。またむし歯有病状況は、飲料水中フッ化物濃度が0ppmから1.2ppmの範囲において急勾配で減少し、それ以上のフッ化物濃度になると、減少傾向は緩慢になっていきました。

こうしたことから「飲料水中フッ化物濃度が1ppm以下であれば歯のフッ素症の流行がなく、また1ppm前後のフッ化物を含む飲料水はむし歯の発生を大きく抑制する」という結論が出され、このような自然の模倣によってフッ化物が不足した水道水にフッ化物を添加すれば、むし歯が予防できるということが判別されたのです。

*歯のフッ素症:エナメル質に境界不明瞭の白斑・白濁・白い水平縞があらわれる。マイルドなものは専門家でないと識別が困難である。中等度になると歯面全体にわたってチョーク様に白濁する。これに小陥凹が加わることがある。小陥凹部には外来性の色素が沈着し、褐色-黒色を呈することがある。むし歯が少ない。
*ppm:「100万分の1」の単位。例えば、ある物質が1リットル中に1mg含まれているということ。

2. 水道水フロリデーションの始まり

1945年に、米国ミシガン州のグランド・ラピッズ(Grand Rapids)ほか北米の3カ所において世界ではじめての水道水フロリデーションが開始されました。その10年後には、永久歯のむし歯を約50~70%予防するという結果があらためて確認されたのです。【図2】

3. 水道水フロリデーションの普及

その後、水道水フロリデーションは、米国内はもとよりオーストラリア・ブラジル・香港・アイルランド・マレーシア・ニュージーランド・シンガポール・英国など多くの国々や地域に導入されるようになりました。世界的にみると61カ国、3億5,600万人が水道水フロリデーションからの利益を受けていると見積もられています。

また世界23カ国から集められた永久歯むし歯の予防効果(86編)、および乳歯むし歯の予防効果(66編)に関する報告を収集し総括してみますと、国の違い・民族の違い・生活様式の違い、さらにむし歯有病状況の違いがあるにもかかわらず、現状のむし歯有病状況を半分以下にするという効果が確認されています。

4. 日本における水道水フロリデーション

日本においては、1952年から1965年まで京都市山科地区で水道水フロリデーションが試験研究として行われました。その他に沖縄県(1957~73年)および三重県朝日町(1967~72年)でも実施されていたことがあります。残念なことに現在ではいずれも中止されていますが、その再開が望まれるところです。

【付記】
水道水フロリデーションは、「水道水フッ化物濃度調整」あるいは「水道水フッ化物濃度適正化」ともいわれます。
過去にはフッ化物が不足している飲料水にフッ化物を添加する場合のみに限定して「水道水フッ素化」あるいは「水道水フッ化物添加」と表現されることがありましたが、現在ではフッ化物が過量の場合はフッ化物を部分的に除去すること、また不足の場合は同じく添加することによって濃度を適正に調整するという本来の定義に基づいた表現が採用されるようになりました。

新潟大学 歯学部 口腔生命福祉学科 口腔衛生支援学講座 八木 稔

参考文献

  1. 日本口腔衛生学会フッ化物応用研究委員会編
    フッ化物応用と健康
    口腔保健協会, 東京, 2001.
  2. Dean,H.T.
    The investigation of physiological effects by the epidemiological method,In'Fluorine and dental health'
    edited by Moulton,F.R.,American Association for the Advancement of Science,Washington, 1942, p.23-31.
  3. Arnold,F.A.,Likens,R.C.,Russel,A.L.,and Scott, D.B.
    Fifteenth year of the Grand Rapids fluoridation study
    J.Am.Dent.Assoc.,65;780-785,1962.