厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト

e-ヘルスネット

フッ化物洗口

一定濃度のフッ化ナトリウム溶液(5~10ml)を用いて、1分間ブクブクうがいを行う方法で、永久歯のむし歯予防手段として有効です。第一大臼歯の萌出時期(就学前)にあわせて開始し中学生まで続けます。保育園・幼稚園・小中学校で集団実施されていますが、個人的に家庭で行う方法もあります。

twitterでシェアする

facebookでシェアする

フッ化物洗口

フッ化物洗口は、永久歯のむし歯予防を目的に一定の濃度のフッ化ナトリウムを含む溶液で1分間ぶくぶくうがいをする方法です。

フッ化物洗口の実際

1. 洗口頻度と使用する薬剤の濃度

保育園・幼稚園・小中学校で集団として行う場合、週5回法と週1回法があります。週5回法では0.05%フッ化ナトリウム溶液(フッ化物イオン濃度225ppm)、週1回法では0.2%フッ化ナトリウム溶液(同900ppm)を用います。週5回法は主に保育園・幼稚園で採用されています。
家庭で使用される場合、歯科医院で購入できる洗口剤(同250ppm)や薬局で購入できるOTCフッ化物洗口剤(同225ppm)を用いて毎日行います。

2. 洗口液の量と洗口時間

1回の洗口液の量は、就学前の幼児では5~7ml、小学生以上では10mlです。洗口時間は1分間で、砂時計を見ながらあるいは音楽に合わせて行います。なお就学前の幼児では、真水による「ぶくぶくうがい」と吐き出しの練習をして、上手にできることを確認してから洗口液に切り替えます。

3. 洗口後の注意

洗口後30分間は飲食・うがいを控えます。保育園では午睡の前に、幼稚園や小中学校では授業の直前に実施されています。家庭では就寝前の歯磨きの後が適切です。

フッ化物洗口の予防効果

報告によれば、むし歯予防効果は約30~80%です。第一大臼歯の萌出時期に合わせた開始と長期間継続することが効果を確かにするために必要です。またこの獲得した効果は洗口終了後も持続しています。また成人においても隣接面むし歯や根面むし歯の予防に効果的です。

1. 就学前からのフッ化物洗口の有効性[1]

フッ化物洗口の予防効果に関する論文分類

予防効果に関する論文を開始年齢によって分類すると、小学校入学後(6歳)の実施群の30%前後に対し、就学前4歳児から実施した群では、40~80%と、就学前からの実施で高い予防効果を得ることができます[1]

2. フッ化物洗口終了後の予防効果の持続

施設単位で行われるフッ化物洗口は、中学校卒業で終了します。終了後のむし歯有病状況を、洗口を経験しなかった群と比較すると、20歳では50~58%の予防効果が報告されています[2]

フッ化物洗口の安全性:1回の洗口での口腔内フッ化物残留量

保育園児の洗口後の口腔内残留率は約10%です。週5回法の場合約0.2mgのフッ化物が口腔内に残ります。この量はフッ化物錠剤の投与基準量の0.5mg/日(3~6歳児)の半分以下で、お茶をコップ1~1.5杯飲んだときに摂取するフッ化物の量に相当します。また就学前児(体重20kg)が1回分の洗口液を全量(7ml中のフッ化物量は1.6mg)誤って飲んだとしても、急性中毒の心配はありません[1]

フッ化物洗口の普及状況

2016年3月の調査では全国の約12,000施設で約127万人が実施[3]しており、同年の歯科疾患実態調査[4]では、4~14歳における家庭での利用も含めた経験者の割合は17%となっています。世界的にみると約1億人の小児がフッ化物洗口を実施しています[5]

(最終更新日:2019年8月2日)

濃野 要 のうの かなめ

新潟大学大学院 医歯学総合研究科 口腔生命福祉学講座 口腔保健学 教授

2001年新潟大学歯学部卒業、05年新潟大学博士(歯学)、06年新潟大学歯学部予防歯科学講座助教、10年3月Newcastle University(イギリス)客員講師、10年10月新潟大学歯学部予防歯科学講座助教、19年11月新潟大学医歯学総合病院予防歯科講師。21年4月新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔生命福祉学講座口腔保健学教授。

参考文献

  1. 筒井 昭仁, 八木 稔 編
    新フッ化物ではじめるむし歯予防
    医歯薬出版, 2011.
  2. 岸 洋志 ほか
    20歳でみた小児期う蝕予防管理の成果
    口腔衛生学会雑誌 41: 426-427, 1991.
  3. 特定非営利活動法人日本フッ化物むし歯予防協会
    http://www.nponitif.jp/
  4. 厚生労働省
    平成28年歯科疾患実態調査
    https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/62-28-01.pdf
  5. 日本口腔衛生学会フッ化物応用委員会 編
    フッ化物応用の科学 第2版
    口腔保健協会, 2018.