学校健診で多くの年齢の子供たちに最も多い疾病がむし歯です。生えてから間もない歯は弱く、また甘い飲食物を好むことが多ので、子供はむし歯になりやすいことで知られます。子供のむし歯は減少を続けていますが地域格差が存在します。子供のむし歯の多くは奥歯の溝から発生します。この予防には溝を埋めるシーラントやフッ化物の利用が有効です。また地域格差の解消には、地域の社会環境・生活環境を改善することが大切です。
子供はむし歯になりやすいことで知られます。その理由のひとつが、生えて間もない歯は十分に硬くなっておらず、石灰化が完全に進むまでに生えてから2~4年かかるからです。また、砂糖を含んだ飲料やお菓子を好むことも要因として挙げられます。
乳歯のむし歯に特徴的な要因としては、哺乳瓶にジュースを入れて与えること、卒乳時期が遅いこと、保護者による歯みがきの開始時期が遅いこと、フッ化物配合歯磨剤の利用開始時期が遅いことなどが挙げられます。
学齢期の永久歯のむし歯に特徴的な要因としては、子供が自分で歯みがきを行う場合、奥歯や新しく生えた歯で磨き残しができることが挙げられます。子供に発生するむし歯の8割以上が、歯ブラシの届かない臼歯の溝(小窩裂溝)から発生しているという報告があります[1]。
またむし歯が少ない集団では、小窩裂溝からの発生が主なむし歯は、砂糖の摂取量や摂取頻度とあまり関係なく発生することがわかってきました[2]。そのため現在の子供のむし歯の予防には、歯科医院での小窩裂溝を埋めるシーラント、フッ化物の利用(フッ化物は歯質を強化します。市販のフッ化物配合歯磨剤の利用や歯科医院でのフッ化物塗布などがあります)が特に重要になります。また砂糖を含んだ飲食物をだらだらと食べないこと、寝る前の2時間以内の飲食を控えることや十分な歯みがきも大切です。
子供のむし歯には大きな地域格差がありますが、これは地域の社会環境や生活環境の違いによります[3]。むし歯を予防するための良い生活環境をつくることで、むし歯を減らすことが可能です。一部の地域では小学校でフッ化物洗口剤によるうがいをできる環境にしており、むし歯が減少しています[4]。個人でフッ化物洗口という生活習慣を何年も続けていくのは困難です。しかしフッ化物洗口実施小学校においては、どのような家庭の子供でも学校に行けば、むし歯予防の生活習慣を送ることができます。これは学校の環境が個人の生活習慣やむし歯に影響をしている良い例といえます。このように個人での対策だけでなく、生活環境を改善することで大きく減らすことができるのが子供のむし歯の特徴です。
子供のむし歯は減少を続けているものの依然として広く蔓延しています。減少の理由としては、生活習慣の改善やフッ化物配合歯磨剤の普及が考えられています。学校健診で最も多い疾病がむし歯です。8~9歳の約6~7割がむし歯に罹患した経験を有します[5]。また、永久歯が生えそろう中学生以降には、年齢とともにむし歯に罹患した本数が増える傾向があります。
(最終更新日:2020年1月16日)