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フッ化物歯面塗布

比較的高濃度のフッ化物溶液やゲル(ジェル)を歯科医師・歯科衛生士が歯面に塗布する方法です。乳歯むし歯の予防として1歳児から、また成人では根面むし歯の予防として実施されています。矯正治療中の患者さんや唾液流量の低下している人など、むし歯になるリスクの高い人に対して他のフッ化物応用法に加えて実施されています。

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フッ化物歯面塗布は、萌出後の歯の表面に直接フッ化物を作用させることによって、むし歯抵抗性を与える方法です。歯科医師や歯科衛生士が行うむし歯予防手段であるため、歯科医院や保健所・区市町村保健センターなどで実施されています。公衆衛生手段としては、費用や人手が必要なうえ、実施対象(受診した者)が限られるなど弱点があります。

使用薬剤

リン酸酸性フッ化ナトリウムとフッ化ナトリウムが主な配合フッ化物で、剤型としてゲル(ジェル)と溶液があります。配合濃度はフッ化ナトリウムとして2%(フッ化物イオン濃度として9,000ppm)になります。

塗布の手技

主に下記3つの方法が用いられており、歯ブラシ法・綿球法が一般的です。

  • 綿球・綿棒法:溶液タイプの製剤を用いて、小綿球または綿棒に浸して歯面に塗布する方法
  • 歯ブラシ法:ゲル(ジェル)タイプの製剤を、歯ブラシを用いて、通常の歯磨きの要領で歯面に塗布する方法
  • トレー法:既成または個々人の歯列に合わせたトレーにゲルまたは溶液タイプの製剤をのせ、歯面に接触させる方法

塗布後の保健指導

  1. 塗布終了後に唾液を吐き出させ、うがいや飲食は30分間しないように指導します。
  2. 乳幼児の場合、保護者に対して間食指導・ブラッシング指導を併せて実施します。
  3. 次回塗布の予約手続きを行います。

予防効果

フッ化物歯面塗布は単に1回受けても効果は得られません。年2回以上定期的に継続して受ける必要があります。乳幼児に定期的に継続して実施した場合、むし歯をほぼ半分に減少させたとの報告があります。また永久歯に対する予防効果については20~30%の報告が多いようです[1]

安全性:フッ化物溶液(ゲル)準備量と口腔内残留フッ化物量

他のフッ化物製剤と異なりフッ化物濃度が高いため、取り扱いは専門家に限られていますが、低年齢児に応用する場合には使用量に注意します。
小児に応用する場合、1回の塗布に使用する薬剤の量は2g(2ml)以内とします。薬剤2g(2ml)中に含まれるフッ化物の量は18mgになります。この量では急性毒性の心配が不要です。溶液の場合は目盛り付きポリカップに1~2mlを計量します。またゲルの場合は、パイル皿のくぼみに擦り切り1杯を取ると、約1gのゲルの計量ができます。なお適正な術式における1回の塗布後の口腔内残留フッ化物量は1~3mgです。

普及状況

歯科疾患実態調査によれば、フッ化物歯面塗布を受けたことがある方の割合は平成17年度調査で初めて50%を超え、平成28年度調査では62.5%となっています[2]

(最終更新日:2019年8月2日)

濃野 要 のうの かなめ

新潟大学大学院 医歯学総合研究科 口腔生命福祉学講座 口腔保健学 教授

2001年新潟大学歯学部卒業、05年新潟大学博士(歯学)、06年新潟大学歯学部予防歯科学講座助教、10年3月Newcastle University(イギリス)客員講師、10年10月新潟大学歯学部予防歯科学講座助教、19年11月新潟大学医歯学総合病院予防歯科講師。21年4月新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔生命福祉学講座口腔保健学教授。

参考文献

  1. 筒井 昭仁,八木 稔 編
    新フッ化物ではじめるむし歯予防
    医歯薬出版, 2011.
  2. 厚生労働省
    平成28年歯科疾患実態調査
    https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/62-28-01.pdf