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う蝕の原因とならない代用甘味料の利用法

スクロース(砂糖)などの発酵性糖質に替わってう蝕の原因にならない代用甘味料を上手に利用することが、う蝕予防にとって重要です。いろいろな代用甘味料が開発されており、内閣府消費者庁が許可している特定保健用食品(トクホ)や国際トゥースフレンドリー協会認定食品に利用されています。う蝕予防のため、特に食間にはこれらの食品を活用し、メリハリのある食習慣をつけることが肝要です。

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1. 代用甘味料とは

代用甘味料とはスクロース(砂糖)の替わりに用いる甘味物質の総称です。糖尿病でも安心して食べられる高血糖を生じない甘味料、肥満対策に用いる低カロリーのダイエット用甘味料、そしてむし歯の原因にならない甘味料などがあります。

表1はいろいろな代用甘味料の種類とスクロースの甘味度を1.0とした時の相対甘味度を示したものです。これらの甘味料の中で発酵性(酸産生性)がない、あるいは十分に低ければ、う蝕の原因になりません。それでは発酵性(酸産生性)とう蝕はどのような関係にあるのでしょうか。次に、う蝕の起こる仕組みを見ながら考えます。

表1: いろいろな代用甘味料のスクロースに対する相対甘味度と発酵性(酸産生性)
分類 名称 甘味度
(スクロース=1)
プラークによる
発酵性
(酸産生性)
糖質系甘味料 単糖 グルコース(ブドウ糖) 0.74
フルクトース(果糖) 1.73
異性化糖 1.3
転化糖 1.3
二糖 スクロース(ショ糖) 1
マルトース(麦芽糖) 0.32
ラクトース(乳糖) 0.16
ラクツロース(ラクチュロース) 0.6~0.7
トレハロース 0.5
  スクロース異性体 パラチノース(イソマルツロース) 0.5
トレハルロース 0.5
オリゴ糖 カップリングシュガー 0.5~0.6
フラクトオリゴ糖 0.3~0.6
糖アルコール ソルビトール 0.54
マンニトール 0.57
マルチトール 0.8~0.95
ラクチトール 0.35
キシリトール 1.08
エリスリトール 0.7~0.8
還元水飴 0.2~0.7
還元パラチノース(イソマルチトール) 0.5
化学修飾系 スクラロース 600
非糖質系甘味料 配糖体系 ステビオサイド(ステビア) 300
グリチルリチン 50
アミノ酸系 アスパルテーム 100~200
化学合成系 アセサルファムK 200
サッカリン 200~700
ズルチン 70~350
サイクラミン酸ナトリウム(チクロ) 300~700

2. 発酵性糖質とう蝕

歯の表面に付いている歯垢(プラーク)は膨大な数の細菌のかたまりです。これらの細菌の多くは、私たちが口にした糖質の一部を分解して酸を産生し、歯の表面を酸性にします。細菌が糖質を分解し酸を産生することを「発酵」といいます。十分に酸性になると歯が溶け出し、歯を構成しているヒドロキシアパタイトからカルシウムやリン酸が抜けていきます(これを「脱灰」といいます)【図1 A】。歯の表面を覆うエナメル質はpH 5.5より低くなると急速に溶け始めるとされ、このpHを「臨界pH」と呼びます。しかし、私たちの口にある唾液には、糖質や酸を洗い流し、酸を中和しpHをもとに戻す力があり、さらに、カルシウムやリン酸を含むことから、少し溶けてしまった歯の表面を修復することができます。これが歯の「再石灰化」です。日に三度の食事で発酵性の糖質を取り、歯表面のpHが低下しても健全な歯でいられるのはそのためです【図1 B上】。

しかし、発酵性糖質を含む間食を頻繁にとり、臨界pHを下回るpH低下が繰り返されると再石灰化は脱灰に追い付けなくなり、ついに歯は実質的に欠け始めます【図1 B下】。これがう蝕の始まりです。

したがって、発酵性糖質を含む間食の頻度をいかに減らすかが重要です。すなわち、間食の頻度をできるだけ減らし、間食をとる場合にはできるだけ発酵性糖質を含まない食品を選ぶことが、う蝕予防のために重要ということになります。

それでは、間食としてどのような食品を選べば良いのでしょうか。

う蝕が起こる仕組み

図1: う蝕が起こる仕組み

3. う蝕の原因にならない代用甘味料の上手な使い方

これまでのお話から、間食として、発酵性糖質が入っておらず、発酵性のない代用甘味料で作られた食品を食べれば、う蝕予防に効果的であることは、理解されたのではと思います。しかし、お店で食品表示を見てそのような食品を探すとなると簡単ではありません。そこで、消費者庁では保健機能食品と呼ばれる食品群を定め、その中に、様々な疾患の予防につながる食品を「特定保健用食品(通称トクホ)」として許可しています。う蝕予防につながるトクホには、トクホマーク【図2】とともに「むし歯になりにくい」「歯が再石灰化しやすい環境にする」などのヘルスクレームが表示されていますので、簡単に見つけることができます。う蝕予防につながるトクホには発酵性糖質は入っておらず、代わりに様々な種類の発酵性のない、あるいは低い代用甘味料が使われています。

消費者庁が許可しているトクホの数は2019年7月8日現在で1,065品目ですが、このうちう蝕予防に関するトクホは84品目となっています。さらに2015年からは、新たに「機能性表示食品」が保健機能食品に加わりました。トクホでは国がその食品の効果を認めているのに対し、開発メーカーが自主的に効果を示し届け出た食品です。2019年7月24日現在、2,224品目(撤回された届出を含む)が届け出されていますが、このうち4品目が「歯ぐき(歯肉)の健康維持」に関するものです。今後、機能性表示食品の利用拡大が期待されます。

特定保健用食品のマーク

図2: 特定保健用食品のマーク

加えて、国際トゥースフレンドリー協会認定の食品もあります。評価基準に適合し、むし歯の心配のない食品に「歯に信頼マーク」【図3】が表示されており、これもう蝕予防につながる機能性食品として有効です。

日本トゥースフレンドリー協会マーク

図3: 歯に信頼マーク

う蝕予防のためには、できるだけ間食の頻度を減らし、間食をとる場合には発酵性糖質を含まないものを食べるようにすることが重要です。トクホマークや歯に信頼マークのついた機能性食品は歯の表面のpHを下げないことが実験的に示されており、間食として相応しいと考えられます。砂糖などの発酵性糖質は食事時に摂取し、食後のブラッシングを心掛け、間食をとる場合には、う蝕予防につながる機能性食品を摂取するというように、メリハリのついた食習慣をつけることが重要です。

とくに、ガムなどのよく噛んで食べる形態の食品は、唾液の分泌を促し、歯の再石灰化効果を高めますので、積極的な利用が推奨されます。その際も、発酵性糖質を含んでいないことを確認しましょう。

(最終更新日:2019年8月2日)

高橋 信博

高橋 信博 たかはし のぶひろ

東北大学大学院 歯学研究科 教授、東北大学大学院 歯学研究科長・歯学部長

1984年東北大学歯学部卒業、88年東北大学大学院歯学研究科修了。86年日本学術振興会特別研究員、88年東北大学歯学部附属病院医員、88年米国ミネソタ大学歯学部Visiting Assistant Professor、90年東北大学歯学部助手、98年同助教授、2001年東北大学大学院歯学研究科教授・歯学部教授、04年同副研究科長・副学部長、10年東北大学教育研究評議員。20年より東北大学大学院歯学研究科長・歯学部長。基礎歯学を基盤とした歯学・歯科医療保健福祉、口腔健康科学に立脚した異分野連携・融合領域に関わる教育・研究に従事している。12年国際歯科研究学会日本部会会長、20年口腔保健用機能性食品研究会理事長、21年国際歯科研究学会アジア・太平洋地区理事。

参考文献

  1. 今井 奨
    むし歯予防と代用甘味料.
    花田信弘(監)イラストでみるこれからのむし歯予防 キシリトールとアパタイトを正しく理解する.
    砂書房:5-26.
    1997.
  2. 髙橋信博
    第11章 齲蝕の生化学.
    早川太郎,須田立雄(監)口腔生化学 第6版.
    医歯薬出版:273-294.
    2018.