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歯みがきによるむし歯予防効果(予防法)

歯みがきは、歯面からプラークを機械的に除去することを目的とした予防法です。これにはセルフケアとプロフェッショナルケアがあります。セルフケアによってプラークを毎日完全に除去することは現実には不可能と考えられます。むし歯予防を成功させるには、セルフケアとともに他のむし歯予防法を組み合わせることが必要です。

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歯みがきとむし歯予防効果

むし歯予防方法の予防効果の比較

図1: むし歯予防方法の予防効果の比較[1]

歯みがきは、歯面からプラークを機械的に除去することを目的とした予防法です。これには各人が自宅などで日々行うもの(セルフケア)と歯科医師や歯科衛生士らの専門家によって診療室で行われるもの(プロフェッショナルケア)があります。今日ほとんどの人が歯を磨く習慣を身につけています。しかし本人の努力では歯ブラシの届かないところからのむし歯の発生を防ぐことは困難です。すなわち奥歯の噛み合わせの溝のところや歯と歯の隙間に対して、セルフケアによってプラークを毎日完全に除去することは現実には不可能と考えられます。

各種フッ化物の利用方法と歯みがきで予防効果の差をみたトーレル・エリクソンの報告を紹介します。10歳の子供を対象に2年間にわたり調査されたものです。【図1】に示したように、むし歯予防効果の一番高かったのはフッ化物洗口で、何も予防をしなかった対象と比べて予防率は49%となっています。またフッ化物歯面塗布の予防率は20%、フッ化物配合歯磨剤(F+)による歯みがきは18%および23%となっていますが、フッ化物を含まない歯みがき剤(F-)での歯みがきでは差は認められませんでした。
さらに歯科衛生士による頻回(2週間に1回)の専門的歯面清掃法によってむし歯や歯肉炎が著しく減少した調査もあります。

歯みがきの公衆衛生的なむし歯予防

学校歯科保健活動の評価

図2: 学校歯科保健活動の評価[2]

小・中学校などでは、公衆衛生的な予防法として長年歯みがき指導が実施されてきました。筒井らは4つの小学校からの卒業生が進学する1中学校の1年生を対象に調査を行い、それぞれの小学校で行われてきた歯科保健対策を評価しました【図2】。

特にむし歯予防対策を校内で行わなかった学校(A,B)、毎給食後に歯みがきを励行した学校(C)、フッ化物洗口を行った学校(D)に分類し、一人平均むし歯数を比較しました。毎給食後に歯みがきを実施していたC群では前歯部にむし歯予防効果が認められましたが全体では明らかな効果はなく、フッ化物洗口を実施していたD群では前歯部・口腔全体ともに高い予防効果が認められました。さらに学校を実施現場としたある調査では、毎日15分程度の歯みがきでも奥歯も含めた全体のむし歯発症数でみると有意な予防効果は得られませんでした。むし歯予防を成功させるには、単なる歯みがきだけではなくフッ化物応用など他のむし歯予防法を組み合わせることが必要です。

(最終更新日:2019年8月8日)

葭原 明弘

葭原 明弘 よしはら あきひろ

新潟大学大学院 医歯学総合研究科 口腔保健学分野 教授

1987年新潟大学歯学部卒業。2001新潟大学大学院医歯学総合研究科助教授、07年新潟大学大学院医歯学総合研究科准教授、11年新潟大学大学院医歯学総合研究科教授、12年から新潟大学歯学部口腔生命福祉学科長。予防歯科学の臨床および研究に併せ地域歯科保健活動にも積極的に参加している。

参考文献

  1. Per Torell & Yngve Ericsson.
    Two-Year Clinical Tests with Different Methods of Local Caries-Preventive Fluorine Application in Swedish School-Children.
    Acta Odontologica Scandinavica.1965,23,287-322.
  2. 筒井 昭仁, 小林 清吾, 野上 成樹, 境 脩, 堀井 欣一.
    学校歯科保健対策における歯口清掃指導およびフッ素洗口法の評価.
    口腔衛生学会雑誌.1983,33,79-88.