女性の喫煙による妊娠出産への影響として、早産、低出生体重・胎児発育遅延などが挙げられます。また生殖能力低下、子宮外妊娠、常位胎盤早期剥離、前置胎盤を引き起こす可能性が指摘されています。さらに、妊娠中においては、妊婦本人の喫煙(能動喫煙)だけでなく受動喫煙であっても、乳幼児突然死症候群(SIDS: Sudden Infant Death Syndrome)の要因となることが確実視されています。
わが国では、女性の喫煙率は男性に比べて低くなっています。令和元年(2019年)調査では、男性27.1%、女性7.6%となっていました[1]。年齢階級別にみると、50歳代が最多で12.9%となっており、次いで40歳代の10.3%、60歳代の8.6%と続きます。
一方、家庭で受動喫煙の機会が「ほぼ毎日」あった人は、男性7.4%、女性11.6%[1]と女性に多く、受動喫煙による妊娠出産への悪影響の回避が課題となっています。
改正健康増進法(2020年4月完全施行)では、望まない受動喫煙を生じさせないよう配慮する義務(配慮義務)を喫煙者に課しており、妊娠中の女性の受動喫煙が減少する効果が期待されています。
喫煙は、妊娠・出産の過程においても、さまざまな健康影響を及ぼします。
これらにより、胎児・胎盤の低酸素状態や、胎盤の老化促進・機能低下が起こることから、低出生体重児や早産のリスクが高まります。さらに、子宮外妊娠、常位胎盤早期剥離、前置胎盤を引き起こす可能性についても指摘されています。
妊婦本人の喫煙が早産や低出生体重・胎児発育遅延のリスクを高めることは、科学的に明らかになっています[2]。妊娠中の喫煙期間が長くなるほど早産のリスクは高まり、喫煙本数が多いほど出生体重や身長を減少させます。一方、禁煙により胎児発育が改善する、つまり喫煙者にとっては低出生体重の予防に禁煙が有効であることを示す研究結果も報告されています。また、妊婦本人の喫煙や出生後の周囲の人の喫煙が乳幼児突然死症候群(SIDS: Sudden Infant Death Syndrome)の要因となることも明らかになっています。
妊婦本人が喫煙しなくても、まわりの人の喫煙によってたばこの煙にさらされる「受動喫煙」についても、胎児の発育などに悪影響が生じることが知られています。
妊娠中の受動喫煙は、乳幼児突然死症候群(SIDS)の要因であることが確実視されているほか、低出生体重・胎児発育遅延との関連も指摘されています。
たばこ規制に関する世界保健機関枠組条約[4]には、次のような記述があります。
世界保健機関(WHO)がたばこ規制枠組条約の締約国に提供した報告書[5]によると、たばこ産業が市場における女性の規範を操作し、喫煙が女性の自立や束縛からの解放といった肯定的な取り組みを行い、また体重管理(ダイエット)の選択肢のひとつというイメージの醸成を図っており、今日もそのような概念を推進し続けているとされています。
喫煙やたばこが、女性らしさの向上と反抗の両方を表していると思わせる、あるいは女性に「女性用たばこは健康への害が少ない」と認識させるような洗練されたマーケティングもあり、条約締約国に対して注意が呼びかけられています。
(最終更新日:2021年12月28日)