喫煙者が吸っている煙だけではなくタバコから立ち昇る煙や喫煙者が吐き出す煙にも、ニコチンやタールはもちろん多くの有害物質が含まれています。本人は喫煙しなくても身の回りのたばこの煙を吸わされてしまうことを受動喫煙と言います。
受動喫煙との関連が「確実」と判定された肺がん、虚血性心疾患、脳卒中、乳幼児突然死症候群(SIDS)の4疾患について、超過死亡数を推定した結果[1]によると、わが国では年間約1万5千人が受動喫煙で死亡しており健康影響は深刻です。
受動喫煙の科学的な研究は、日本の平山雄博士による報告が世界的に知られています。1981年英国医学雑誌に掲載された、重度喫煙者の妻(非喫煙者)の肺がん死亡リスクについての論文では、本人が吸わなくてもヘビースモーカーの夫をもった女性では、肺がん死亡のリスクが約2倍になると報告されています。
以後多くの研究がなされ、さらに複数の研究結果をまとめて推計するメタアナリシス(メタ分析)も行われています。その結果、現在では受動喫煙による肺がんのリスクは1.28倍(28%の上昇)、虚血性心疾患のリスクは1.3倍(30%の上昇)、脳卒中のリスクは1.24倍(24%の上昇)とされています。さらに受動喫煙は子供の呼吸器疾患や中耳炎、乳幼児突然死症候群を引き起こすことが指摘されています。また、妊婦やその周囲の人の喫煙によって低体重児や早産のリスクが上昇します。
(最終更新日:2021年08月30日)