喫煙開始年齢が早いほど、健康被害が大きく、またニコチン依存も強くなります。このため、成人年齢が18歳に引き下げられても、法的に喫煙できる年齢は20歳が維持されています。また、健康への悪影響が大きい子どもや若者をたばこの煙から守るため、2020年に施行された改正健康増進法では、喫煙できる場所への20歳未満の者の立ち入りが禁止されるなどの対策が講じられました。
発育期の細胞は感受性が高いため、発がん性物質の悪影響を受けやすい、あるいは動脈硬化病変を起こしやすいことを示す報告があるほか、未成年の喫煙者で咳、たん、息切れの症状、呼吸機能の低下との因果関係が確認されています[1]。また、国内外の研究から、喫煙開始年齢が早いほど、がんや心血管疾患などたばこに関連する病気になりやすく、早世するリスクが高くなることが明らかになっています[2]。
ニコチン依存度については、習慣的に喫煙を始めた年齢別に見た分析から、若いうちに吸い始めるほど依存度の高い人が多くなるという結果が報告されています[3]。10代から吸い始めた人は20代で吸い始めた人よりも、また20代で吸い始めた人は30代で吸い始めた人よりも、ニコチン依存度の高い人の割合が多くなっています。若いうちに吸い始めた人は、よりたばこをやめにくいと考えられます。
未成年者を含む若年者の喫煙行動は、個人的要因と社会的要因の相互作用によって形成されることがわかっています[2]。個人が持っている知識や態度、自らの能力への自信、コミュニケーション・スキル、ストレスの管理能力などの個人的要因だけでなく、家族や友人など周囲の人の喫煙状況、喫煙規制の状況、たばこの入手しやすさなど社会的要因も関連しています。若年者の喫煙を防止するためには、喫煙防止教育により喫煙の健康影響に関する知識や喫煙開始の社会的圧力への気づき・対処能力の習得を図るだけでなく、たばこの価格や広告等の規制など、喫煙防止につながる社会環境づくりが求められています。
民法改正により、2022(令和2)年4月1日より成人年齢は18歳に引き下げられました。しかしながら、喫煙・飲酒・ギャンブルに関する年齢制限は、民法の成人規定と連動せず、引き続き20歳という年齢が維持されました[4]。健康への悪影響やニコチン依存症の重症化への懸念が考慮された結果です[4]。
20歳未満の者にたばこを販売することは禁止され、販売時の年齢確認等の措置が義務づけられています。自動販売機では成人識別用ICカード「taspo(タスポ)」が、コンビニエンスストアなどでは年齢確認ボタンが導入されてきました[2]。
また、小中高の学校教育においても、保健体育や道徳、総合学習、特別活動などを通じて、喫煙・飲酒・薬物乱用防止に関する指導がなされてきました。喫煙による不良行為少年の補導も大きく減少し、2020(令和2)年では2011(平成23)年の3分の1以下になっています[5]。
健康日本21(第二次)では、10年間の国民健康づくり運動により生活習慣及び社会環境の改善の取り組みを推進し、喫煙に関する目標の一つとして「2022(令和4)年までに未成年者の喫煙をなくす(0%)」ことが設定され、取り組みが実施されました。その結果、2021(令和3)年の中高生の喫煙率は、中学1年生男子 0.1%、中学1年生女子 0.1%、高校3年生男子 1.0%、高校3年生女子 0.6%となりました。
目標設定時、2010(平成22)年の中高生の喫煙率が、中学1年生男子 1.6%、中学1年生女子 0.9%、高校3年生男子 8.6%、高校3年生女子 3.8%であったのと比較すると、喫煙率0%の目標は達成できなかったものの、中高校生の喫煙率は低下し、特に高校3年生の男女において大きく改善しました[6]。
令和 2(2020)年に全面施行された受動喫煙を防ぐための健康増進法の改正においても、健康影響が大きい子どもなど20歳未満の者や患者への配慮は検討の大きなポイントになりました。子どもなど20歳未満の人や、患者が多く利用することが想定される施設については、より厳しい対応が求められています。学校、病院・診療所、児童福祉施設、行政機関などは、原則敷地内禁煙となりました。屋内は完全禁煙で、喫煙専用室等を設置することもできません[7]。
また、その他の施設では、喫煙専用室や加熱式たばこ専用喫煙室などが設置できますが、喫煙エリアは、たとえ喫煙を目的としない場合であっても、利用者・従業員ともに20歳未満の立ち入りは禁止となっています。法施行前に既に存在した小規模飲食店では、例外的に店舗全体を喫煙可能な店(喫煙可能店)とすることが認められていますが、その場合も、利用者・従業員ともに20歳未満の立ち入りは禁止となります[7]。
喫煙可能な設備のある施設では、図のような標識の掲示が求められています。20歳未満の立ち入り禁止についても、図記号が用いられています。これらの標識に注意すれば、たばこの煙を避けることができます。
改正健康増進法に上乗せする条例を策定し、さらに受動喫煙対策を進めようとする自治体もあります。例えば東京都では、子どもの受動喫煙からの保護を一層図るために「東京都子どもを受動喫煙から守る条例」を策定し、家庭や自動車内、公園や学校周辺などで子どもの受動喫煙防止に努めなければならないという努力義務を求めています[9]。
また、保育所や幼稚園、小中学校、高等学校を敷地内全面禁煙とし、屋外の喫煙場所を設けないようにすることを決めている自治体もあります。
(最終更新日:2022年12月13日)