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アルコールとメタボリックシンドローム

メタボリックシンドロームに関わる高血圧・脂質異常症・高血糖・内臓脂肪の蓄積・脂肪肝には、お酒の飲みすぎが関与している場合が多数見られます。厚生労働省の「健康日本21(第二次)」では、生活習慣病のリスクの高い飲酒量として、男性1日平均40g以上、女性20g以上とし、そのような飲酒者を減らすことを目標としています。また一般的に、週に2日間程度の休肝日を入れることも推奨されます。

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1. はじめに

メタボリックシンドロームとは、内臓肥満(内臓に脂肪がたまった)の状態(基準は腹囲が男性は85cm女性は90cm以上)かつ、高血圧(130/85mmHg以上)・脂質異常症(HDLコレステロールが40mg/dL未満かつ/または中性脂肪が150mg/dL以上)・高血糖(空腹時血糖が110mg/dL以上)の3つの項目のうち、2つ以上が当てはまる場合をいいます(「メタボリックシンドロームの診断基準」参照)。なぜメタボリックシンドロームを問題にするかというと、この状態ではきわめて動脈硬化をきたしやすく、心臓・血管疾患(脳梗塞や心筋梗塞など)の重大な病気になる危険性が大きいからです。

2. アルコールは高エネルギー物質

メタボリックシンドロームの要素である肥満症・高血圧症・脂質異常症・高血糖(糖尿病)は生活習慣病といわれ、この4つの生活習慣病のいずれにも飲酒が影響します。糖質ゼロを売りとした飲料が人気ですが、アルコール自体が1gで7kcalの高カロリー物質です。9%の缶チューハイ500mLのアルコール分だけで250kcalになります。ちなみに炭水化物は1gで4kcal、脂肪は9kcalです。

アルコールは酢酸からアセチルCoAになり、ミトコンドリアでエネルギーに変換されるだけでなく、脂肪酸やコレステロール合成にも使われます。アルコール性脂肪肝にはアルコール自体から作られた中性脂肪も含まれます。アルコール代謝でエネルギーを産生している間は、ほかの脂肪などの栄養素は使わずに蓄積されるため、多量飲酒者でビール腹になる人がいるのも理解できます。
多量に飲酒する男性で、1B型アルコール脱水素酵素の働きが弱い遺伝体質だと、アルコールが長時間体内に残り、お酒のエネルギーをゆっくり消費するため、より脂肪肝やビール腹になりやすいことも知られており、アルコール代謝酵素の遺伝子型も影響します。肥満はお酒自体のカロリーだけでなく、つまみが脂っこいものであったり、アルコールによって食欲が亢進したりすることによっても起こります。

3. アルコールと生活習慣病

飲酒は少量から血圧を上昇させ、量が多くなるほど血圧上昇が起こりやすいことが知られています。そのため、飲酒量の増加とともに脳出血のリスクが上昇します。
脂質異常症との関連では、飲酒により中性脂肪が増加することがよく見られる現象です。その一方で、動脈硬化を抑制するHDLコレステロールも飲酒で増加する人が多く、一般的に中性脂肪とHDLコレステロールは片方が高いともう片方が低くなるというシーソーの関係があるので、どちらがより強く起きるかは飲酒量に加えて、遺伝的な個体差もあります。
糖尿病は少量飲酒で発症リスクが少し低く、多量飲酒でリスクが上昇する傾向があります。カロリーオーバーだけでなく、アルコール性肝臓病あるいはすい臓(膵臓)のダメージでも糖尿病が発症・増悪します。多量飲酒者では、食事療法・運動療法ともにおろそかになりやすく、糖尿病のコントロールも不良になりやすいのが一般的です。

4. 特定健診・特定保健指導での飲酒指導

メタボリックシンドロームの考え方を活用した生活習慣病対策として行われている標準的な健診・保健指導プログラムのなかに、飲酒指導も組み込まれています。生活習慣病のリスクを高める飲酒者に対しては、AUDITなどで飲酒状況の評価を行い、飲酒量を減らす簡単な介入の実施や、専門医に紹介すべきかどうか等を検討します。AUDITとは、Alcohol Use Disorders Identification Test(アルコール使用障害特定テスト、通称オーディットAUDIT)というWHOが作成した問診票で、8-14点が危険な飲酒、15点以上がアルコール依存症疑いに分類されています。

(最終更新日:2022年10月11日)

横山 顕 よこやま あきら

独立行政法人 国立病院機構 久里浜医療センター 臨床研究部長

静岡県出身。1985年慶応義塾大学医学部卒業、内科医、博士(医学)。30年以上アルコール離脱期病棟の担当医として勤務。2004年より現職。アルコール依存症の臨床と研究が専門。

参考文献

  1. Yokoyama A, et al. Associations among liver disease, serum lipid profile, body mass index, ketonuria, meal skipping, and the alcohol dehydrogenase-1B and aldehyde dehydrogenase-2 genotypes in Japanese men with alcohol dependence.
    Hepatology Research 2020; 50: 565-77.