厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト

e-ヘルスネット

アルコールと高脂血症

血液中の脂質が基準値を超えてしまうことを高脂血症といいます。アルコールが関係する高脂血症は中性脂肪(トリグリセリド)とHDLコレステロールの増加です。飲酒時の摂取エネルギーを減少させれば基準値にもどる可能性もありますが、アルコールの代謝そのものに伴う脂質代謝異常もからんでいる場合は、飲酒コントロールを行うことも必要です。

twitterでシェアする

facebookでシェアする

人の血液中の脂質には中性脂肪(トリグリセリド)・コレステロールリン脂質遊離脂肪酸が含まれ、身体の各組織にエネルギーを供給したり組織の構成成分となったりと重要な役割を担っています。これらの脂質のうちいずれかが異常高値を示す状態を脂質異常症といいます。中でも異常高値を示すと身体に問題となるのは、コレステロールとトリグリセリドです。
脂質異常症そのものには自覚症状はほとんどありませんが、血中に脂質が過多に存在すると動脈硬化を促進させるため、心筋梗塞・狭心症などの虚血性心疾患や脳梗塞などの動脈硬化性疾患を引き起こすこととなります。また急性膵(すい)炎や脂質の消化が劣ってしまっている慢性膵炎の発作の原因となります。

血中トリグリセリドが増加する原因として、食事から摂取する脂肪過多だけではなく、肝臓で合成されるトリグリセリドの増加があげられます。常習飲酒者にみられる高トリグリセリド血症は飲酒時の脂肪摂取過多のほかに、この後者の原因が絡んだ血清トリグリセリドの増加が原因となります。
トリグリセリドは、肝臓における合成の増加を反映して、アルコール摂取量に比例して増加します。過度のアルコール摂取は、脂肪組織からの遊離脂肪酸の放出を促進させるとともに肝臓のアルコール代謝が亢進し、それに伴って酸化されない脂肪酸を増加させ、結果として肝細胞内での脂肪酸からのトリグリセリドの過剰合成が引き起こされます。その一部は肝臓外へ分泌されて高トリグリセリド血症の原因となり、一部は肝細胞内に蓄積されて脂肪肝の原因となります。1000mg/dlを超えるような重症の高トリグリセリド血症を呈することもあり、前述のように高トリグリセリド血症は動脈硬化や膵炎の原因となりうるため注意が必要です。

もうひとつ、アルコールにより代謝が影響をうける脂質はHDLコレステロールです。コレステロールの主成分は動脈硬化を促進するLDLコレステロール(悪玉コレステロール)と動脈硬化の予防に働くHDLコレステロール(善玉コレステロール)があります。HDLコレステロールはアルコール摂取量の増加に伴って増加します。適量の飲酒(男性で1日日本酒換算1合ぐらい)であれば、血圧を上げずにHDLコレステロールが増加するため、脳血管障害・虚血性心疾患の発生率を低下させるといわれています。これが「適度の飲酒が寿命を延ばす」と言われるようになった所以です。
しかし一方で常習飲酒は血圧の上昇をもたらし、飲酒中の摂取カロリーオーバーや夜間に高摂取されるカロリーバランス、前述したアルコールの影響などによって高トリグリセリド血症や肥満を引き起こす場合もあるため、「適度の飲酒」が却って生活習慣病を促進してしまう可能性もあります。
またアルコールがHDLコレステロールに及ぼす作用は、年齢や性別によって異なり個人差も大きいことが知られています。さらに長期間の大量飲酒者では、ときに100mg/dlを超えるような著しい高HDLコレステロール血症を認め、角膜輪や虚血性心疾患を合併することもあります。したがって長期大量飲酒者での高HDLコレステロール血症は、適度の飲酒時の動脈硬化を予防するHDLコレステロールの増加とは、異なるものとして考える必要があります。

アルコールが血清HDLコレステロールを増加させる機序として、HDLの合成・分泌の亢進、HDLの異化(分解)の低下などが考えられています。高脂血症の治療は、食事療法・運動療法など生活習慣の改善が基本で、十分な効果が得られないようであれば薬物療法を併用していきます。飲酒習慣がある場合は、飲酒時におつまみとして取る摂取エネルギーを減らしたり、単にカロリーオーバーによる増加ではなく、上述したアルコールによる脂質代謝異常もからんでくるため、飲酒量のコントロールも行います。一日あたり男性は純アルコールで20g(日本酒換算1合程度)女性はその半量までが、厚労省の提唱する「節度ある適度な飲酒量」の目安とされています。

参考文献

  1. 山下静也.
    アルコールと高脂血症の関係は?
    肥満と糖尿病 7: 535-536, 2008.
  2. 三國洋子.
    アルコールと高脂血症.
    栄養-評価と治療 19: 189-193, 2002.