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アルコール性肝炎と非アルコール脂肪性肝炎

アルコール性と非アルコール性、ふたつの肝炎の組織像は類似しており、肝臓内の酸化ストレスなど共通の発症メカニズムが研究されています。両者とも進行すると肝硬変や肝臓癌に至ります。アルコール性肝炎は常習飲酒家で大量飲酒後に発症し、救命率の低い重症型アルコール性肝炎もあります。アルコール依存症が背景にある場合はその専門治療が必要です。非アルコール性脂肪性肝炎は、過食・運動不足・肥満・糖尿病・脂質異常症などに伴う脂肪肝を背景として発症します。

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アルコール性肝炎と非アルコール性肝炎、ふたつの異なる病気は学問的にはしばしば対比されて論じられます。肝臓の組織検査をすると両者の肝炎の組織像に類似点があり、そこから肝臓内の酸化ストレスなどの両者に共通する肝炎発症のメカニズムの研究が行われているためです。
肝組織像では、肝細胞が膨化し多くの脂肪摘が見られ、好中球主体の炎症性細胞浸潤があり、稀にマロリー体という変性物質が肝細胞内に出現します。両者とも進行して肝硬変や肝臓癌になる場合があります。

アルコール性肝炎は常習飲酒家で大量飲酒後に発症し、多くの場合、食欲不振・だるさ・発熱がみられます。肝臓は痛みを出さない臓器ですが、アルコール性肝炎の時は肝臓が張れとともに右上腹部に痛みが出現し、黄疸も見られ、尿の色が紅茶色になります。ひどくなると腹水とむくみも出現します。血液検査では、白血球が増加し、肝酵素AST(GOT)は200IU/L以上であり、貧血・血小板減少・アルブミン減少・プロトロンビン時間の延長・クレアチニン上昇など、その他の原因で起こる急性肝炎と類似の血液検査異常を示します。診断は飲酒歴がはっきりしていれば容易です。ウイルス性急性肝炎の重症型に劇症肝炎と呼ばれる病態がありますが、アルコール性肝炎にも重症型アルコール性肝炎と呼ばれる病態があり、いずれも救命率が低い重篤な肝炎です。

多量飲酒者が必ずアルコール性肝炎を発症するわけではなく個体差があります。女性のほうが少ない飲酒量で男性よりアルコール性肝障害を起こりやすいと考えられています。一度アルコール性肝炎を発症した人では飲酒により繰り返しアルコール性肝炎となり、肝硬変へと進行していきます。アルコール依存症が背景にある人が多く、この場合アルコール依存症の専門治療も必要です。

非アルコール性脂肪性肝炎(NASH: nonalcoholic steatohepatitis)は、過食・運動不足・肥満(特に内臓脂肪型)糖尿病脂質異常症などに合併した脂肪肝を背景として発症する肝炎です。飲酒しない人であれば非アルコール性ということは明白ですが、多くの脂肪肝は飲酒と飲酒以外の要因の両者が関しており、アルコール性肝炎や非アルコール性脂肪性肝炎にもオーバーラップする部分があるはずです。

アルコールが原因の主であれば、通常は肝酵素のAST/ALD(GOT/GPT)比が1以上となります。脂肪肝が診断されると、従来は主に動脈硬化による生活習慣病の予防の観点から生活指導や肥満・糖尿病・脂質異常症の治療が行われてきました。しかしNASHは単なる脂肪肝ではなく、肝硬変へと進行したり肝臓癌になるケースがあるため、肝臓自体の予防の観点からも治療の重要性が強調されています。
NASHは比較的新しい疾患概念であり、日本には経過を追った大規模な研究がなく、どの程度の頻度で発症し、どの程度の人が肝硬変や肝臓癌にまで進行するのが明らかになるまでには、今後の多くの研究を待たなければなりません。しかし肥満人口の増加とともに今後NASHの増加が予想されています。