適切な飲酒による適量のアルコール摂取は、糖尿病の発生を予防する可能性があります。しかし度を越した過剰なアルコール摂取は高血糖を来たし、それは同時に脂質異常症や高血圧などと相まって脳血管障害・虚血性心疾患の危険因子となります。
糖尿病はインスリンが分泌されないことや、インスリンがうまく使えないことで血糖値(血液中のブドウ糖の値)が高くなり、その結果として目や末梢神経、腎臓などの小さな血管の障害から、やがて脳血管障害・虚血性心疾患などの動脈硬化疾患も引き起こす一連の疾患群です。
血糖値が空腹時で126mg/dL以上、もしくはブドウ糖を投与して2時間の血糖値が200mg/dL以上、もしくは普段の血糖値が200mg/dL以上のいずれかが満たしていることに加え、のどが乾くことや水をたくさん飲むといった典型的な糖尿病症状か、目の症状(糖尿病性網膜症)、あるいは数ヶ月の血糖値の推移をみる検査値であるHbA1c(NGSP値)が6.5%以上である場合に糖尿病と診断されます。
糖尿病はすい臓(膵臓)のインスリンを分泌するβ細胞が破壊されることで起こる「1型糖尿病」と、過食や運動不足・肥満からインスリンがうまく使えない、あるいはインスリンが作れない「2型糖尿病」に大別されますが、この中でもアルコールは後者の「2型糖尿病」と関連があるとされます。
適切な飲酒による適量のアルコール摂取は糖尿病の発生を抑えると考えられています。具体的には1日あたり20~25g程度のアルコール摂取が糖尿病の発生を抑えるとされています。しかしそれを超えた飲酒量では、肝臓に蓄積した脂肪への影響や、すい臓からのインスリン分泌を抑える影響から、血糖値を上昇させる可能性があると考えられています。また飲みすぎ、食べすぎによってカロリー過多になることこそ、血糖値を上げる最大かつ重要な原因となります。
アルコールの過剰な摂取が続くと、やがてアルコール性肝硬変やアルコール性すい炎に至ります。アルコール性肝硬変では高血糖になるほか、肝臓から必要なブドウ糖が放出されず、命に関わるような低血糖を引き起こすことがあります。またアルコール性すい炎では血糖値を下げる細胞と上げる細胞のどちらも破壊されることで、やはり高血糖にも低血糖にもなり得ます。いずれの病態も血糖値は不安定になりますし、とくに治療としてインスリン製剤やインスリン分泌薬を使用している人はその傾向が激しくなります。
糖尿病は自覚症状がなく、気づいたときには進行している病といわれます。適切な飲酒量と定期的な健康診断を心がけましょう。
(最終更新日:2021年10月19日)