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「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」推奨シート:成人版

成人を対象に、身体活動や運動に取り組むうえでの基本的な考え方、目安、具体例などを紹介しています。また、座りっぱなしの時間が長くなりすぎないよう注意することや、筋トレを週2~3日行うことを推奨しています。

※本シートは厚生労働省のホームページに掲載されています。

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1.推奨事項

  • 個人差等を踏まえ、強度や量を調整し、可能なものから取り組む。今よりも少しでも多く身体を動かす。
  • 強度が3メッツ以上の身体活動を週23メッツ・時以上行うことを推奨する。具体的には、歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を1日60分以上行うことを推奨する(1日約8,000歩以上に相当)。
  • 強度が3メッツ以上の運動を週4メッツ・時以上行うことを推奨する。具体的には、息が弾み汗をかく程度の運動を週60分以上行うことを推奨する。
  • 筋力トレーニングを週2~3日行うことを推奨する(週4メッツ・時の運動に含めてもよい)。
  • 座位行動(座りっぱなし)の時間が長くなりすぎないように注意する(立位困難な人も、じっとしている時間が長くなりすぎないよう、少しでも身体を動かす)。

2.身体活動・座位行動とは

1.身体活動とは

身体活動とは、安静にしている状態より多くのエネルギーを消費する、骨格筋の収縮を伴う全ての活動のことです。身体活動は、日常生活における家事・労働・通勤・通学などに伴う「生活活動」と、健康・体力の維持・増進を目的として、計画的・定期的に実施される「運動」の2種類に分類されます。


2.座位行動とは

座位行動とは、座位や臥位の状態で行われる、エネルギー消費が1.5メッツ以下の全ての覚醒中の行動で、例えば、デスクワークをすることや、座ったり寝ころんだ状態でテレビやスマートフォンを見ることなどがあります。

3.身体活動・運動と健康増進効果

身体活動量が多いほど、疾病の発症リスクや死亡リスクが低いことが明らかになっています[2][3]。さらに、現在の身体活動量が少ない人ほど、身体活動量が今よりわずかに増えるだけでも健康増進効果が得られやすいと考えられます。身体活動量が成人の推奨値を満たしていない人(例えば1日の歩数が8,000歩未満の人)では、今よりも少しでも身体を動かすことが、疾病の発症リスクや死亡リスクの低下につながります。

運動を積極的に実施することでも、健康増進効果が高まると考えられます。息が弾むような運動を週60分実施している場合、疾病の発症リスクや死亡リスクは約10%低いことが示されています[3][4]。また、身体活動量が1日10分多くなると、疾病の発症リスクや死亡リスクが約3%低下すると推測されているのに対して、運動量が1日10分多くなると、そのリスクは約6%低下すると推測されています[3]。さらに、筋力トレーニングの健康増進効果(「筋力トレーニングについて」参照)も明らかになっています。個人の体力や運動の好みに合わせて、週60分以上の運動を実施することで、さらに健康増進効果が得られやすくなると考えられます。

4.座位行動と健康リスク

座位時間が長いほど、死亡リスクが増加することが明らかになっています[5]。一方、1日60分以上の中強度以上の身体活動によって、座位行動による死亡リスクの低下が期待できることや[6]、長時間の座位行動をできる限り頻繁に(例えば、30分ごとに)中断(ブレイク)することが、食後血糖値や中性脂肪、インスリン抵抗性などの心血管代謝疾患のリスク低下に重要であることも報告されています[7]。強度を問わず、少しでも身体を動かすことが健康によい影響を及ぼすことが報告されています[8]。立位困難な人も、じっとしている時間が長くなりすぎないよう、少しでも身体を動かすことが推奨されます。

(最終更新日:2024年2月22日)

丸藤 祐子

丸藤 祐子 がんどう ゆうこ

駿河台大学 スポーツ科学部 准教授

早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修了。博士(スポーツ科学)。早稲田大学スポーツ科学学術院助手、医薬基盤・健康・栄養研究所研究員を経て、2021年より現職。研究テーマは、身体活動・運動・体力と健康の関係を疫学と生理学の両方の視点から明らかにしていくこと。

岡 浩一朗

岡 浩一朗 おか こういちろう

早稲田大学 スポーツ科学学術院 スポーツ科学部 教授

早稲田大学大学院人間科学研究科修了。博士(人間科学)。早稲田大学スポーツ科学部助手、日本学術振興会特別研究員PD、東京都老人総合研究所(現東京都健康長寿医療センター研究所)介護予防緊急対策室主任を経て、2006年に早稲田大学スポーツ科学学術院准教授として着任。2012年より現職。身体活動不足・座りすぎの解消に関する研究に従事。

参考文献

  1. 厚生労働省. 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023.
    https://www.mhlw.go.jp/content/001194020.pdf
  2. Murakami H, Tripette J, Kawakami R, et al. "Add 10 min for your health": The new japanese recommendation for physical activity based on dose-response analysis. J Am Coll Cardiol. 2015; 65: 1153-1154.
  3. 丸藤祐子、川上諒子. プラス・テンのエビデンス補強のための文献レビュー.厚生労働科学研究費補助金 令和3年度分担報告書.
    https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/202109022A-buntan1.pdf
  4. 厚生労働省. 運動基準・運動指針の改定に関する検討会. 健康づくりのための身体活動基準2013.
    https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002xple-att/2r9852000002xpqt.pdf
  5. Patterson R, McNamara E, Tainio M, et al. Sedentary behavior and risk of all-cause, cardiovascular and cancer mortality, and incident type 2 diabetes: a systematic review and dose response meta-analysis. Eur J Epidemiol. 2018; 33(9): 811-829.
  6. Ekelund U, Steene-Johannessen J, Brown WJ, et al. Does physical activity attenuate, or even eliminate, the detrimental association of sitting time with mortality? A harmonised meta-analysis of data from more than 1 million men and women. Lancet, 2016; 388: 1302-1310.
  7. Loh R, Stamatakis E, Folkerts D, et al. Effects of interrupting prolonged sitting with physical activity breaks on blood glucose, insulin and triacylglycerol measures: A systematic review and meta-analysis. Sports Med. 2020; 50: 295-330.
  8. Füzéki E, Engeroff T, Banzer W. Health Benefits of Light-Intensity Physical Activity: A Systematic Review of Accelerometer Data of the National Health and Nutrition Examination Survey (NHANES). Sports Med. 2017; 47(9): 1769-1793.