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「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」情報シート:筋力トレーニングについて

筋力トレーニングの実施のポイントや具体例の説明、筋力トレーニングを実施する際の注意点などを詳しく記載しています。また、筋力トレーニングの健康増進効果についても紹介しています。

※本シートは厚生労働省のホームページに掲載されています。

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1.筋力トレーニングのポイント

  • 筋力トレーニング(筋トレ)には、マシンなどを使用するウエイトトレーニングだけでなく、自重で行う腕立て伏せなどの運動も含まれる。
  • 成人および高齢者に、筋トレを週2~3日実施することを推奨する。
  • 筋トレの実施は生活機能の維持・向上だけではなく、疾患発症予防や死亡リスクの軽減につながるとの報告もある。
  • 可能であれば、有酸素性身体活動と組み合わせるとさらなる健康増進効果が期待できる。

2.筋力トレーニング(筋トレ)とは

筋トレは、特定の筋肉に連続的に負荷をかけて筋力を向上させるために行われる運動です。例として、自分の体重を負荷として利用する自重トレーニング(例:腕立て伏せやスクワット)やウエイト(おもり)を負荷として利用するウエイトトレーニング(例:マシンやダンベルなどを使用する運動)があります。

筋肉に抵抗(レジスタンス)をかける運動であることからレジスタンス運動(レジスタンストレーニング)、さらに、医学分野では筋力増強運動(muscle strength exercise)と呼ばれる場合もあり、様々な呼称が存在します。どの呼称であっても、特定の筋肉のみに連続して負荷がかかるような運動様式の場合は筋トレと考えてよいでしょう。

3.筋トレの健康増進効果

1. 運動器に対する健康増進効果

国際的な身体活動ガイドラインを策定する際に実施された包括的なレビューにおいて、筋トレの実施により、筋力や身体機能、骨密度が改善し、高齢者では転倒や骨折のリスクが低減することが明らかにされています[2][3]。このような結果を示した研究では、週に2~3日の筋トレを実施するプログラムが最も多く採用されていました。したがって、同様の頻度で行うと上述のような健康増進効果が得られることが期待できます。


2.疾病および死亡リスクに対する健康増進効果

筋トレは疾病の発症リスクや早期の死亡リスクとも関連することが報告されており、長期的な健康増進効果も確認されています。例えば、疾病および死亡リスクとの関連を検討したシステマティックレビューおよびメタ解析では、筋トレを実施している群は、実施していない群と比較して、総死亡(全死因による死亡)リスクおよび心血管疾患・全がん、糖尿病・肺がんの発症リスクが、実施している他の身体活動量に関わらず10~17%低いことが明らかにされています[4]。さらに、筋トレの実施時間の影響について検討した結果では、全く実施していない群と比較すると、わずかな時間であっても実施していた群の総死亡リスクおよび心血管疾患・全がん・糖尿病の発症リスクは低いことが示されています[4]。この他にも、有酸素性の身体活動と組み合わせて実施することで、それぞれ単独で実施するよりも、総死亡および心血管死亡、全がん死亡のリスクが低いことが報告されています[4]


3.筋トレを実施/推奨する際の注意点

筋トレを実施する際は、筋肉にしっかり負荷をかけるとともに、休息日もしっかり設けることを意識しましょう。筋肉はこの過程を通して適応していきます。負荷をかける際は、日常生活レベル以上の負荷を繰り返しかけ、慣れてきたら少しずつ負荷を高めていく(=漸進性過負荷の原則)ことが重要です。さらに、筋トレを行う際は、個人の特性や能力に合わせて実施する「個別性の原則」も大変重要です。運動教室など集団で実施する際は、目的を明確にし、一律の目標回数(ノルマ)を設けるのではなく、個人に合った目標を設定することを勧めましょう。
具体的な例として、厚生労働省が公表している『標準的な運動プログラム』があります。これをベースに自分に合った内容で実施しましょう。自宅で実施する場合は、無理せずに「できなくなるところまで行う」が最も簡単な目安だといえます。また、血圧の急激な上昇を抑えるために、息をこらえないように注意してください。必要に応じて、運動指導の専門家に自分の状態に合った筋トレのプログラムについて相談しましょう。なお、筋トレの時間が長くなりすぎると逆効果となる可能性も示されていますので、健康づくりを目的に行う場合は、やりすぎに注意が必要です[4]

筋肉は年齢に関係なく鍛えることができます。特に、高齢者や女性は筋力が低下しやすいため、筋力の向上に努めましょう。

(最終更新日:2024年2月22日)

門間 陽樹

門間 陽樹 もんま はるき

東北大学大学院医学系研究科運動学分野 准教授

博士(障害科学)。運動と健康に関する疫学研究に従事。特に体力と生活習慣病の関係が専門。運動・スポーツ分野における疫学手法の普及・教育に取り組む。

参考文献

  1. 厚生労働省. 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023.
    https://www.mhlw.go.jp/content/001194020.pdf
  2. World Health Organization. Guidelines on physical activity and sedentary behaviour. 2020.
    (日本語訳:https://www.nibiohn.go.jp/eiken/info/pdf/WHO_undo_guideline2020.pdf
  3. Physical Activity Guidelines Advisory Committee. 2018 Physical Activity Guidelines Advisory Committee Scientific Report. US Department of Health and Human Services. 2018.
    https://health.gov/sites/default/files/2019-09/PAG_Advisory_Committee_Report.pdf
  4. Momma H, et al. Muscle-strengthening activities are associated with lower risk and mortality in major non-communicable diseases: a systematic review and meta-analysis of cohort studies. Br J Sports Med. 2022; 56: 755-763.