全身持久力(最高酸素摂取量)について詳しく紹介しています。具体的には、科学的根拠や現状、基準値の改訂理由などを記載しています。また、全身持久力を維持・向上させる方法についても紹介しています。
※本シートは厚生労働省のホームページに掲載されています。
全身持久力の指標である最高酸素摂取量(VO2peak/kg、単位:mL/kg/分もしくはメッツ)は、様々な要因による死亡や疾患発症の強力な予測因子です。したがって厚生労働省は、疾患の発症や死亡のリスクの低下が期待される全身持久力の値、すなわち基準値を提示し、身体活動・運動を通した全身持久力の維持・向上を推奨しています。
VO2peak/kgと死亡や非感染性疾患の発症との間には、直線的な負の量反応関係が見られ、VO2peak/kg1メッツあたりの死亡の相対危険度が10~20%ほど低値を示します。VO2peak/kgが低い人から高い人まで、少しでもVO2peak/kgを高めることによって、健康上の利益を得ることができます。
日本人のVO2peak/kgの記述統計値の報告に主眼を置いている論文の系統的レビューを行い、標準値の推定を行いました[2]。各採択論文から、延べ男性54,611人、女性24,100人のVO2peak/kgの平均値及び標準偏差を抽出し、それらを統合することで推定平均値と分布を算出しました。
その結果、VO2peak/kgは10歳代で増加するが、20歳代以降は加齢に伴い低下し、その低下は線形ではなく、20~30歳代で大きく低下し、40歳以降は緩やかな低下でした。
「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」には、性・年代別の全身持久力を図示していますので参考してください[1]。
「健康づくりのための身体活動基準2013」で示された旧基準値は、日本人男性の20歳代において推定平均値より1~1.5メッツ低く、約90%の20歳代男性が旧基準値を達成していました。一方、50歳代以上では 男女とも旧基準値が推定平均値より1~1.5メッツ高く、この世代で旧基準値を達成できる者は5~25%に過ぎませんでした。
基準値が国民の実情と乖離している場合、「余裕で基準値を超えている」「基準を達成することが困難」といった誤った認識を多くの個人や集団に対して生じさせる可能性が懸念されます。このことから、今回示された推定標準値に基づき、新たな全身持久力の基準値を性・年代別に示しました(表)。
VO2peak/kgは、肺で取り込んだ酸素を心臓から運搬し活動筋で糖や脂肪を分解することで身体活動の遂行に必要なエネルギーを産生する能力の指標です。VO2peak/kgの向上には、有酸素性身体活動を1回30分間、週当たり3回以上、継続して実施することが推奨されています。
強度は、安全と効果のバランスから、VO2peak/kgの50~75%程度、主観的には「ややきつい」と感じる程度が適切です。
(最終更新日:2024年03月27日)