座位行動とは、座った状態のみならず、横になって休んだりテレビを観たりするすべての状態のことです。近年、生活環境や仕事環境の機械化・自動化に伴い、身体活動不足に加えて長時間の座位行動が、多くの人々の日常生活全般に蔓延しています。
座位行動とは、「座位、半臥位(はんがい)および臥位におけるエネルギー消費量が1.5メッツ以下のすべての覚醒行動」と定義されています[1]。近年、「健康づくりのための身体活動基準2013」で推奨されているような中高強度の身体活動をある程度行っていたとしても、長時間の座位行動(座りすぎ)による健康への悪影響がかなり注目されるようになってきました。
余暇におけるテレビ視聴やゲームなどの娯楽のみならず、仕事中の会議やパソコン使用によるデスクワーク、移動や通勤時の自動車運転などに伴う座りすぎが、世界中の人々の日常生活全般に蔓延しています。そのため、心身の健康を維持・増進するためには、中高強度の身体活動を増やすことに加え、いかにして座りすぎを減らすことができるかが公衆衛生上の大きな関心事となっています。
心身の健康の維持・増進に大きな効果をもたらすと考えられてきた3メッツ以上の中高強度身体活動は、1日の起きている時間のうち、わずか3~8%程度であることが示されています。一方、仕事の形態やライフスタイルの差異にもよりますが、座位行動は起きている時間のうちの6割近くを占めることが知られています[2]。
座位行動は比較的新しい概念であり、日本において「歩数」や「運動習慣」のような経年的な調査は現時点では実施されていませんが、「平成25年国民健康・栄養調査」によると、平日1日の総座位時間に関して8時間以上と回答した男性は38%、女性は33%もいることが明らかになりました【図】[3]。また、代表的な日本人を対象にした最近の研究では、平日総座位時間の平均値±標準偏差は5.3±3.7時間であり、1日の総座位時間が8時間を超えるような「座りすぎている人」の特徴として、過体重(BMIが25㎏/ m2以上)であること、未婚であること、仕事をしていないこと、教育歴が高いことが挙げられています[4]。
(最終更新日:2023年03月01日)