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発育・加齢と身体活動量

子ども時代の運動経験は、成人期以降の体力レベルあるいは身体活動状況を左右するというトラッキングの可能性が指摘されています。したがって、子ども時代の身体活動の重要性を十分に理解し、子ども達が積極的に身体を動かすことのできる環境あるいは政策の支援がこれまで以上に必要です。

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およそ20年前をピークにわが国の子どもの体力・運動能力レベルは長期低落していることが報告されています。そしてその原因のひとつに身体活動量の減少があげられています。しかしながら日本において客観性に優れた評価法に基づいて子ども達の身体活動量を長期的に調査した十分な研究データがありません。そこで平成17年度の国民健康・栄養調査において小学生、中学生のスポーツ活動年次推移の結果を参照すると、昭和63年時と比較して平成17年時では年代性別問わず、週3回以上運動を実施している子ども割合は増加していることがわかりました。一見すると現在の子ども達は以前の子ども達よりも活動的であるかのように読み取れます。一方で20年前から現在までの小学生高学年対象に、活動量を1日の歩数で評価した複数の研究報告を調べたところ、男女ともおよそ4000~5000歩近く減少していました。

子ども身体活動量調査という観点から「運動習慣の調査」結果と「歩数の調査」の結果が一致しなかったように、身体活動を単一的な視点で評価することは、情報量として不十分である可能性が考えられます.このようなことから子どもの活動量を評価する際には、1日の総合的な身体活動量や活動パターン(各活動強度に要した時間の分布)など多面的に評価することが重要であると考えられます。それによりこれまで以上に体力低下や肥満の増加の原因追究、あるいはそれらの解消に必要な運動プログラムの提案が可能になります。

ところで子ども期から青少年期を活動的に過ごすことは、その時期の体力向上や良好な健康状態の維持に貢献するだけでなく、成人期以降の体力レベルあるいは身体活動状況を左右するというトラッキングの可能性が指摘されています。すなわち成人期の健康状態の良し悪しは、少なからず子ども時代の運動経験が関与しているといえます。しかし残念なことに国内外を問わず、小学生高学年から高校生までの発育過程において、子ども達の身体活動状況は悪化傾向にあるのが現状です。
小学生から高校生までの発育過程は、神経系の発達・呼吸循環器能力の発達・筋力の発達といった著しい身体の発育期にあります。これは成長スパートと呼ばれており、豊富な運動経験によってそのトレーニング効果がより一層大きくなるため、体格や体力レベルにおいて個人差が顕著に出現すると報告されています。したがって子ども時代の身体活動の重要性を十分に理解し、子ども達が積極的に身体を動かすことのできる環境あるいは政策の支援がこれまで以上に必要であると認識させられます。

一方で平成17年度国民健康・栄養調査による成人期以降の身体活動状況についてみると、1回30分以上の運動を週2回以上実施している者の割合では、男性で40歳代、女性で30歳代が最も低い値を示しています。しかしそれ以降は男女とも60歳代をピークに増加傾向にあります。また1日の歩数の観点からは、厚生労働省の1日10000歩を基準にした場合、その基準を超える者の割合が男性では20歳代、女性では40歳代において最も高値を示しているものの、それぞれ30%と20%程度であり、決して満足できる現状にはありません。特に成人期以降は加齢に伴う基礎代謝量の低下など1日のエネルギー消費量が減少するため、肥満等の問題が深刻になります。したがって身体活動に伴うエネルギー消費量を増やすことでエネルギー出納を上手に調整する必要があるといえます。

参考文献

  1. 足立稔, 笹山健作, 引原有輝, 沖嶋今日太, 水内秀次, 角南良幸, 塩見優子, 西牟田守, 菊永茂司, 田中宏暁, 齊藤愼一, 吉武裕
    小学生の日常生活における身体活動量の評価 : 二重標識水法と加速度計法による検討
    体力科学, 56巻, p347-355, 2007.
  2. 厚生労働省
    平成17年度国民健康・栄養調査
    http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/05/h0516-3.html
  3. Malina, R.M., Bouchard, C. and Bae-Or, O.
    Growth, Maturation, and Physical Activity (second Ed).
    Human Kinetics, Champaign, IL, 2004.