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貧血の予防には、まずは普段の食生活を見直そう

貧血とは赤血球に含まれる血色素(ヘモグロビン)濃度が低下した状態をいいます。もっとも多い貧血の種類は、鉄欠乏性貧血です。鉄欠乏性貧血の予防のためには、食事からしっかりと鉄など必要な栄養素をとることが大切です。そのために動物性食品・植物性食品をバランス良く食べることがポイントです。

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貧血とは

貧血とは赤血球に含まれる血色素(ヘモグロビン)濃度が低下した状態をいいます。貧血はその原因によっていくつかの種類に分けることができますが、もっとも多いものは鉄欠乏性貧血です。

血液の働きで重要なことは、酸素を全身に運搬することです。その酸素を運ぶ役割を担っているのが、赤血球に含まれるヘモグロビンです。ヘモグロビンは主に鉄を含む「ヘム」という色素とたんぱく質が結合(ヘムたんぱく質)してできており、これが酸素と結合して全身に運ばれていきます。そのため体内に含まれる鉄が減少してしまうと、ヘモグロビンも減り酸素を運搬する能力が低下してしまい、易疲労感(疲れやすい)、頭痛、息切れなどの症状や運動機能の低下などを招くことになります。

鉄の1日の摂取推奨量

では鉄はどれくらいとることが必要なのでしょうか。体の代謝によって、成人男性では約1mg、女性では約0.8mgの鉄が1日に損失しています。また女性は月経により、1日あたりに換算してさらに約0.5mgの鉄が損失しています。この損失する鉄を食事から補う必要があります。

食品中に含まれる鉄には「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」があり、前者はレバーや赤肉、赤身の魚などに多く含まれており、後者は野菜や卵、牛乳などに多く含まれています。この2種類で大きく違うのは体内での吸収率で、「ヘム鉄」で高く、「非ヘム鉄」で低いです。実際はヘム鉄か非ヘム鉄の、どちらかのみを食べるということはありません。また食事の内容などの影響も受け、食べた鉄のおおよそ15%程度が吸収されると報告されています。前述の鉄の損失量とこの吸収率を考慮して、日本人成人(20~49歳)が1日の食事から鉄を摂取する量は、成人男性では7.5mg、月経のある女性では10.5mg(月経のない女性:6.5mg)が推奨されています[1]

貧血を予防するための食生活のポイント

貧血を予防するためにはまず、毎日失われる鉄を食事からしっかりとることが必要になります。主な食品の目安量に含まれる鉄量は【図1】に示しました。

図1 主な食品の目安量に含まれる鉄量

主な食品の目安量に含まれる鉄量

文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より鉄量を小数点第2位で四捨五入して算出

鉄の他にもヘモグロビンなどの材料になるたんぱく質・鉄の吸収を高めるビタミンCの摂取も大切です。鉄もたんぱく質も多く含む食品には牛肉やレバー、カツオなどの赤身の魚、あさりなどが、ビタミンCが多い食品には緑黄色野菜・果物などが挙げられます。さらに赤血球が作られるときには葉酸(ビタミンの1種)やビタミンB12などが必要になります。葉酸の多い食品はレバーやほうれん草、アスパラガス、ブロッコリー、納豆など、ビタミンB12の多い食品はレバー、魚介類、チーズなどです。
このように動物性食品・植物性食品をバランス良く組み合わせて食べることがポイントになります。貧血予防におすすめメニューの一例としては、「レバニラ炒め」「あさりとほうれん草のパスタ」「カツオのたたき(大葉、玉ねぎ、長ねぎなどの薬味と一緒に)」「ひじきと大豆の煮物」などがあります。【図2】

図2 貧血予防におすすめのメニュー例

貧血予防におすすめのメニュー例

文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より鉄量を小数点第2位で四捨五入して算出

また、鉄は胃酸が分泌されると吸収されやすくなります。柑橘類や酢などの酸っぱいものを食べたり、よく噛んで食べたりして胃酸の分泌を促すと、鉄の吸収率が高まることが期待できます。

貧血予防には、上記のような鉄を多く含む食事を心掛けるほか、「無理なダイエットをしていないか」「朝食を抜いていないか」など、食生活全般を見直しておきたいものです。通常の食生活での摂取が難しい場合には、ミネラルやビタミンの含有量を強化した食品(鉄であれば牛乳・乳製品、飲料など)も販売されています。表示をよく見て利用を検討してください。

※「あさり」や「かき」には鉄が多く含まれています。これらにはヘム鉄と非ヘム鉄の両者が存在していますが、最近の研究によると、非ヘム鉄のほうが多く含まれているとされています。また、「赤貝」の仲間は比較的ヘム鉄が多いと報告されています。これは赤貝がヘモグロビン系の血液をもっているためです。

女性では妊娠期・授乳期に特に注意が必要

女性の場合は生理や妊娠などで多くの鉄を必要とします。妊娠期・授乳期は、母体の健康・胎児の発育のため、また母乳量と含まれる栄養成分を保つため、鉄以外にもビタミンミネラルなどの栄養素を必要とするため、特に食生活には気をつけましょう。「妊産婦のための食生活指針[2]に具体的な食生活のポイントが示されているので、参考にしてください。

食生活以外の要因で貧血が起きている場合もある貧血の原因は、食生活以外の要因に注意を向ける必要もあります。例えば痔や潰瘍などが原因で貧血症状が現れることがあります。また胃の切除後や肝硬変、人工透析(血液透析)などが原因で貧血が起きていることもあります。原因として食生活に心当たりがないときは医療機関で診察・検査を受けたほうが良いといえます。

(最終更新日:2020年10月1日)

荒井 裕介 あらい ゆうすけ

千葉県立保健医療大学 健康科学部 栄養学科 准教授

管理栄養士。行政栄養士、独立行政法人国立健康・栄養研究所研究員を経て、2010年より千葉県立保健医療大学健康科学部栄養学科講師。2017年より現職。専門は公衆栄養学。

参考文献

  1. 厚生労働省.
    日本人の食事摂取基準 2020年版, (2)微量ミネラル, ①鉄(Fe)
  2. 厚生労働省.
    妊産婦のための食生活指針
    https://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/02/h0201-3a.html
  3. 中村丁次.
    栄養食事療法必携 第3版.
    医歯薬出版株式会社.
  4. Taniguchi CN, Dobbs J, Dunn MA.
    Heme iron, non-heme iron, and mineral content of blood clams (Anadara spp.) compared to Manila clams (V. philippinarum), Pacific oysters (C. gigas), and beef liver (B. taurus).
    J. Food Compos. Anal. 57: 49-55, 2017.
  5. 多紀保彦他監修.
    食材魚貝大百科第2巻 貝類・魚類.
    平凡社.