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脂質異常症(実践・応用)

血液中の脂質の濃度が基準の範囲にない状態を脂質異常症といいます。動脈硬化性疾患にならないようにするためには、早期に脂質異常症を改善する必要があります。いずれの脂質も食事からの摂取だけでなく、肝臓でも作られて血液で全身に運ばれますから、摂取する栄養素の量と組み合わせを調整して対応しましょう。

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血中LDLコレステロールを下げるためには、体重を適正にし、飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、コレステロール摂取量を制限し、不飽和脂肪酸を過不足なくとり、食物繊維を積極的に食べるようにします。トリグリセライドを下げてHDLコレステロール濃度を上げるためには、適正体重を目指す(維持する)よう総エネルギー摂取量に考慮します。そして、炭水化物エネルギー比率を50~60%の中で低めに設定し、アルコールを制限して、n-3系多価不飽和脂肪酸のEPAやDHAを確保します。高カイロミクロン血症の場合は中鎖脂肪酸の利用も考えましょう。
食生活の改善は長続きすることが肝要ですから、おいしく楽しく食べられる工夫もしましょう。日本人が伝統的に摂取してきた、精白度の低い穀類・大豆・魚・野菜・糖質含有量の少ない果物・海藻・きのこなどを組み合わせて、減塩した日本食で食べることがお勧めです。

1. 体重を適正にする

適正な体重(kg)の目安は「身長(m)×身長(m)×BMI」で、BMI(18~49歳:18.5~24.9、50~64歳:20.0~24.9、65歳以上:21.5~24.9)とします。体重は、食事から摂取するエネルギーの量と、活動や生命維持のために使うエネルギー消費量のバランスで決まります。体重を減らさなければならない場合は「肥満と健康」の項を参照してください。

2. 飽和脂肪酸の摂取量を減らすためには

肉類の脂身や鶏肉の皮、ラード、バター、乳脂肪、ココナッツミルクなどには、血中コレステロールを上げる作用のある飽和脂肪酸が多く含まれます。これらの動物性脂肪や脂身の多い肉を控え、赤身肉や脂身をとり除いた肉を食べましょう。牛乳も低脂肪乳にするとよいでしょう。

3.工業的トランス脂肪酸の摂取量を減らすためには

工業的に作られたトランス脂肪酸は、マーガリンやショートニングなどを使った食品や工場生産された揚げ物などに含まれています。揚げ物類やスナック菓子、パイ菓子、クッキー類などをはじめとした市販の洋菓子類には注意しましょう。

4.コレステロール摂取量を制限するためには

コレステロールを多く含む食品をなるべく避けるようにしましょう。特に卵類(鶏卵や魚卵)、内臓類(レバーやモツ)を1~2カ月食べないようにしてみて、血中コレステロール濃度が下がるようならば、コレステロール摂取量の制限が効果的なタイプと考えられます。ある程度コレステロール濃度が下がったら、2~3日に1回程度は食べても大丈夫でしょう。

5. 多価不飽和脂肪酸を摂取するためには

1日に大さじ1杯程度の植物油を料理に使いましょう。ただし、オリーブ油、やし油などには多価不飽和脂肪酸はほとんど含まれません。ドレッシングやマヨネーズを作るときには油を少なめにし、使いすぎに注意しましょう。

6.n-3系多価不飽和脂肪酸の確保は

EPAやDHAといったn-3系多価不飽和脂肪酸は青背の魚に多く含まれます。1日に魚を1切れ程度、食べるようにしましょう。

7. 食物繊維をとるためには

食物繊維を多くとるには、主食を精白度の低い玄米、胚芽米や麦飯、全粒粉のパン、蕎麦などにし、3度の食事ごとにたっぷり2皿の野菜類・海藻・きのこ・こんにゃくなどを食べましょう。豆類や大豆の加工品である納豆にも多く含まれています。

8. アルコールの制限

高カイロミクロン血症の場合は禁酒です。酒類の種類にかかわらずやめておきましょう。節酒を指示された場合は、1日に日本酒なら1合、ビールなら500mL程度、ワイン(アルコール度数14)なら180mL程度までで楽しむようにしましょう。

(最終更新日:2023年02月08日)

丸山 千寿子

丸山 千寿子 まるやま ちずこ

日本女子大学 名誉教授

1976年日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻卒業。76年日本女子大学家政学部食物学科助手、84年同講師、98年同助教授、2003年同教授および日本女子大学大学院家政学研究科教授、04年日本女子大学大学院人間生活学研究科教授などを経て、22年5月より現職。

参考文献

  1. 動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2018年版.
    日本動脈硬化学会, 2018.
  2. 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版.
    日本動脈硬化学会, 2022.