血液中の脂質の濃度が基準の範囲にない状態を脂質異常症といいます。脂質異常症には、他の基礎疾患と関係のない「原発性脂質異常症」と、他の疾患(肥満、糖尿病、腎疾患、内分泌疾患、肝疾患など)や薬物使用に基づいて起こる「続発性脂質異常症」があります。
脂質異常症の診断は、LDLコレステロール:140mg/dL以上、トリグリセライド:空腹時150mg/dL以上、非空腹時175mg/dL以上、Non-HDLコレステロール(総コレステロール-HDLコレステロール):170mg/dL以上、HDLコレステロール40mg/dL未満を基準とします。
動脈硬化性疾患の危険因子となるのは、高LDLコレステロール血症、高トリグリセライド血症、高カイロミクロン血症といった高脂血症と、低HDLコレステロール血症です。これらは遺伝素因、不適切な食事、運動不足、内臓脂肪型肥満などが原因となります。著明な高トリグリセライド血症では、急性膵炎のリスクが高まります。
脂質異常症の予防や治療の基本は、食生活をはじめとする生活習慣を改善することです。薬物療法が必要な場合もありますので、早めに医師に相談しましょう。
いずれの脂質異常症でも、まず体に溜まっている余計な脂肪を減らしましょう。大人の場合、「身長(m)×身長(m)×BMI(18~49歳:18.5~24.9、50~64歳:20.0~24.9、65歳以上:21.5~24.9)」を適正な体重(kg)の目安にします。適正な体重の範囲に入るように、エネルギーの摂取を調整しましょう。
LDLコレステロールを血液中に溜めやすくする飽和脂肪酸や工業的に作られたトランス脂肪酸の摂取量を減らし、不飽和脂肪酸を摂取するようにします。食事からコレステロールを多くとりすぎている人は、コレステロールの摂取を制限することも必要です。また、積極的にコレステロールを体外へ排泄するために、食物繊維の摂取量を増やすことが役立ちます。
トリグリセライドは肝臓で余分な糖質から合成されます。これを抑えるために、炭水化物エネルギー比率を50~60%の中で設定し、果糖を含む加工食品の大量摂取を控えましょう。過剰なアルコールも、トリグリセライドの合成を高めます。アルコール摂取制限は短期間で効果が現れるので、まずは禁酒か節酒をしましょう。一方、脂肪酸のうち、n-3系多価不飽和脂肪酸のEPA、DHAは肝臓でトリグリセライドを作りにくくするため、積極的に摂取するようにします。
血液中の脂質を分解する酵素の働きが著しく悪く、空腹時トリグリセライド濃度が500mg/dL以上にもなる高カイロミクロン血症では、急性膵(すい)炎を予防するために、1日当たりの脂質摂取量を20g以下[3]、あるいは脂質エネルギー比率を5%以下に制限します。中鎖脂肪酸の利用も有用です。
(最終更新日:2023年02月08日)