歯周病は、とくに初期の段階では自覚症状がほとんど出ないので、歯科医療機関での検査を受けないと正確な診断を行うことはできません。歯周病の精密な検査は、プローブという針状の器具を使って歯周ポケットの深さを調べるプロービング検査、エックス線写真によって歯を支える骨の状態を調べるレントゲン検査、歯周病の原因となる歯の周囲の汚れ(プラーク)の付着状況を調べる検査などからなります。
1. プロービング検査
歯周病の早期から現れる症状の1つに、歯と歯肉との間にある隙間(歯周ポケット)が、歯肉が腫れることにより深くなることがあります。歯周ポケットは一般には深くなるほど歯周病の程度が進んでいると考えられ、歯肉の入り口から隙間の底の部分までの距離を測定して重症度の判定に用います。
この距離を測定することをプロービング検査と呼び、歯周病の基本的な検査の一つとされています。測定には目盛りのついたプローブ(探針:針状の金属製の器材)を歯と歯肉の隙間にそっと差し込みます。25g程度と非常に軽い圧しか加えませんので、痛みはほとんどありません。図のように、プローブで深い歯周ポケットがないか検査をして記録していきます。
歯と歯肉の隙間(歯周ポケット)は、歯周病のない健康な歯肉では1~2mm程度ですが、歯周病に罹った歯肉では3mmを超えるような深さになり、重症の患者さんでは10mmを超えるほどプローブが入っていくこともあります。写真のケースは、一見すると健康に見える歯肉にもかかわらず6mmもプローブが入る状態です。
2. エックス線検査
さらに歯周病が進んでくると、歯を支えている歯槽骨が溶けてきますので、歯肉の下に隠れている歯槽骨の高さを調べることも必要になります。歯槽骨の状態を調べるのに最も効果的な検査がエックス線検査です。エックス線検査は、歯槽骨の溶けてなくなった範囲や程度をかなり正確に知ることのできる検査です。
エックス線検査は放射線被曝が気にかかるかと思いますが、歯のエックス線撮影の際の被爆量については、日常生活で自然界から浴びる1年分の自然放射線の数十から数百分の1程度とされています。エックス線検査で評価される歯槽骨の喪失量は、歯周病によってすでに失われてしまった歯を支える骨の量を示すことになります。写真のように比較すると、歯周病が進行するほど歯槽骨は吸収されている様子がわかります。
3. プラーク付着率の検査
歯周病の直接の原因は、歯の周囲に付着した汚れ(プラーク)です。プラークが多く付着していると歯周病になりやすくなりますし、また歯周病の治療を進めていくうえでプラークのつかないようなお口の環境を整えていくことが必要とされています。
プラークの付着量は、染色液を使って染め出してから軽くうがいをしてもらい、付着している部位がわかるようにします(写真の、歯が赤く染まっている部分に付着しています)。そして、肉眼で確認してプラーク付着率を記録します。プラークの付着率は、治療に対する歯肉の炎症の改善しやすさや治療が終了した後の歯周病の再発などの指標として用いることができます。
その他の歯周病の検査としては、歯肉からの出血の程度を調べる検査(出血指数)、歯の揺れを調べる検査(動揺度検査)、歯周病原菌についての細菌検査などがあります。
歯周病は痛みなどの自覚症状が出にくく、知らず知らずに進行する疾患です。またむし歯に比べて、より成人に多い病気であるため、各自治体などを中心として、おもに40、50、60、70歳の節目の方を対象とした検診が実施され、歯周病の早期発見に務めています。
検診の内容は、厚生労働省によって設定されている「歯周病検診マニュアル2015」に基づいていますが、下記のような項目となります。
1. 問診
歯周病に関連する自覚症状の有無、歯科への定期的な受診の有無、歯磨きの回数・時間、歯周炎に関連する可能性のある全身疾患の有無、歯周病が起こりやすく重症化しやすい喫煙習慣の有無。
2. 口腔内検査
これらの検診の結果によって、「異常なし」「要指導」「要精密検査」と判定されます。要精密検査の場合には、歯科医療機関において、先に示したような全部の歯のプロービング検査やエックス線検査などを行い、歯周組織の状態を詳しく調べることが必要となります。
(最終更新日:2022年12月21日)