歯周治療を受けると歯周病原菌が減少して、良好な歯ぐきの状態が得られます。しかし治療終了後に定期的な管理をしないと歯周病原菌が増加したり、咬み合わせが変わったりして歯周病が再発することがあります。そこで定期的に歯科医院を受診して、さまざまな項目のチェックやお口の清掃を受けることをメインテナンスと言います。
歯周治療の主な目的は、原因である歯周病原菌を減らすことであり治療終了時には歯周病原菌はかなり減っていると思われます。しかし時間が経つと磨き残しにより歯周病原菌が増えたり、咬み合わせの変化によって歯への負担が増えたりして、歯周病が再発しやすくなります。
Beckerらの研究によると歯周治療を行わなかった人たちは、1人につき5年間あたり1.8本の歯を失いました。そして歯周治療を行ったけれどメインテナンスを行わなかった場合は、1人につき5年間あたり1.1本の歯を失いました。歯周治療を行い、治療後もメインテナンスを行った人たちは1人につき5年間あたり0.5本の歯しか失いませんでした。上記の研究は調査対象や調査時期が異なるため単純には比較できませんが、メインテナンスは歯の保存に重要であることがわかります【図】。
写真は歯周治療後メインテナンスを受けずに再発した症例と、歯周治療後メインテナンスを行いながら5年後に来院した時の症例です。歯周治療の終了は次のメインテナンスのスタートでもあるわけです。
メインテナンス時には「1. 歯みがきの状態」「2. 歯ぐきの状態や歯周ポケットの深さ」「3. 咬み合わせに問題はないか」「4. その他、義歯や修復物の状態」などをチェックします。そして歯みがきが不十分であれば再度ブラッシング指導を行います。特に歯周治療後は歯と歯の間があいたりして磨きにくい場所ができますので、患者さんひとりひとりに合わせた清掃法を指導します。
歯ぐきは一見健康でも、歯周ポケットを調べることによって再発を早期に発見することができます。歯周ポケットの深さが増したり、出血が見られる場合は歯周病原菌が増加している可能性があります。そのような場合は歯科医師または歯科衛生士が専用の器具を使って歯ぐきの中の歯石や歯垢を除去します。さらに歯の表面を磨くことによって歯垢がつきにくくします。
咬み合わせも歯周病を悪化させる重要な因子のひとつです。特に歯周治療後の患者さんの歯槽骨は減少していることが多く、少しの力のアンバランスが大きな負担になることがあります。そこで歯科医師が咬み合わせに問題がないか慎重にチェックします。さらに修復物が壊れたり、すき間があいたりしていると歯垢がつきやすくなり歯周病原菌が増加します。そこで修復物に問題がみつかればそれを作り直したりすることもあります。
メインテナンスの間隔は、歯周病の重症度や歯みがきの状態などによって個別に決める必要があります。一般的に治療前の状態が悪かった場合や歯みがきがあまりできない場合は、1~3ヵ月ごとにメインテナンスを受けられる方がいいと思います。軽度の歯周炎だったり歯みがきが上手な方は、半年に一度のペースでも大丈夫な場合があります。歯科医師とよく話し合うことが必要です。
(最終更新日:2020年1月6日)