よく噛んで食べることは健康によいと言い伝えられてきましたが、近年の疫学調査により速食い【注】の習慣がある人には肥満者が多いことがわかってきました。「ゆっくりとよく噛むこと」は肥満対策のひとつとして期待されています。その一方で歯を失うと「噛めない」状態になり、栄養摂取バランスの低下をきたします。食べ物をよく「噛むこと」「噛めること」は健康と密接なつながりを持っています。
歯を失う二大原因はむし歯と歯周病です。一般的に歯は奥歯から失われる傾向にあり、比較的若いうちはむし歯で失われる場合が多いのですが、残った歯が少なくなるにつれて歯周病で失われる歯が多くなります。喪失に至るリスクの高い歯は、未処置歯のむし歯・クラウン(冠)装着されている歯・部分義歯の針金がかかる歯(鈎(こう)歯)・歯周疾患が進行している歯などです。
高齢になると残っている自分の歯の数は少なくなり、後期高齢者の平均値は約16本で、約3割の人が総入れ歯を使っています。しかし昔に比べると歯の喪失状況は改善傾向にあります。国際的にみると日本人の高齢者は比較的歯が残っているといえるようです。
歯周ポケット保有者の割合は年齢が増すにつれて高い傾向を示し、45歳以上では過半数を占めます。また全年齢層の約4割の人に歯肉出血が認められます。近年、歯の保有状況が良好になってきたことから、歯周病に罹るリスクを有する歯が増えています。
「8020」を達成するには生涯にわたる歯科保健対策が必要です。小児期から歯の喪失の二大原因であるむし歯と歯周病の予防を充実させることで、将来の「歯の喪失」を防ぐことが可能となります。
「8020(ハチ・マル・二イ・マル)運動」は、「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」という運動です。近年「8020」を達成している高齢者は増加しています。しかし、高齢者の数が増えていますので、「8020」を達成していない高齢者は依然として多い状況です。
歯科医療費は高血圧や脳血管疾患よりも高額です。歯科疾患の通院率は他の疾患と比較して高い値を示しています。歯や口の自覚症状を持っている国民は約4割います。
開示すべきCOIはありません。