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アルコール関連問題の分類

アルコールに関係した問題の全てはアルコール関連問題と呼ばれています。ここでは関連問題を飲酒量や依存のレベルを基準に分類しました。すなわち多量飲酒・有害な使用・プレアルコホリズム・アルコール乱用・アルコール依存症です。各レベルはおおよそ依存の重症度を表しており、問題に対する指導や治療目標もこの分類に従うことが多いものです。

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飲酒行動に関しては、全く飲酒しない人からアルコール依存症のように大量に飲酒する人まで連続的に分布しています。通常は飲酒量が増えるに従って、問題の数と重症度は増えていきます。その大まかな関係を下記の図に示しました。以下、各々の内容を簡単に説明します。

飲酒行動の分布

1. アルコール関連問題

アルコールに関係した問題の全てをアルコール関連問題と呼んでいます。これには様々な健康問題や社会問題が含まれています。また問題は飲酒する当人に限らず、当人を取り巻く周囲の人々や親の飲酒の影響を受けた胎児や子どもなどにも広がっています。

2. 多量飲酒

厚生労働省は「健康日本21」の中で「節度ある適度な飲酒」(健康日本21(第一次))とともに「多量飲酒」(健康日本21(第二次))にも明確な定義を与えています。
「多量飲酒」とは「1日平均60g以上の飲酒」です。アルコール関連問題の多くはこの多量飲酒者が引き起こしていると考えられています。多量飲酒は飲酒量に関する定義ですから、後述する診断名とは別の概念です。おそらく後述の診断をもらう人の多くは、多量飲酒しているものと思われます。

3. 有害な使用・アルコール乱用・プレアルコホリズム

アルコール依存症までには至らないが何らかのアルコール関連問題を有する場合、すなわち図で示された中間部分は最も概念が錯綜しています。日常臨床では精神疾患の診断には、世界保健機関によるICD-10[1]か、米国精神医学会によるDSM-5[2][3]が使われています。この部分は前者では「有害な使用(harmful use)」と呼ばれており、飲酒のために何らかの精神的または身体的障害が存在する場合にのみ診断されます。飲酒による社会的・家族的問題があっても、それだけでは診断の対象とはなりません。これに対して米国精神医学会による診断基準(DSM)は伝統的に飲酒による社会的・家族的問題を重視しており、旧版であるDSM-Ⅳ-TRでは、社会的または家族的問題があれば、当人の精神的・身体的問題の有無にかかわらず、アルコール乱用と診断されることになっていました[2]
一方で我々は「プレアルコホリズム(この問題を有する人はプレアルコホリック)」という概念を提唱しており、臨床現場でよく使われています[4]。プレアルコホリズムは、有害な使用および乱用に比べてより広い概念で、問題の内容を問いません。いずれの概念も依存症には至っていないことが条件で、プレアルコホリズムの場合には、この操作的な境界を「離脱症状連続飲酒の経験がともにないこと」としています。

4. アルコール依存症

依存症の診断基準については、後述のようにDSM-5では依存症概念がなくなったことや、わが国の医療システムではICD分類が採用されていることもあり、実際の依存症の診断ではほとんどの場合にICD-10が使われています。既述の有害な使用・アルコール乱用を含め依存症の診断は、ICD-10およびDSM-IV-TR 、DSM-5ともに全ての薬物に共通に使用されます。従ってたばこ依存症も覚せい剤依存症も同じ診断基準が使用されます。
なおアルコール依存症の具体的な症状については「アルコールと依存」の項を参照してください。

表1 ICD-10 依存症の診断基準(アルコール依存症)

5. アルコール使用障害

アルコール使用障害はDSM-5の疾患概念で、依存症と乱用、さらにはICD-10の有害な使用の概念も含まれています。しかし、統一されて疾患名が“使用障害”となったことに加え、DSM-Ⅳで一旦削除された重症度分類の考え方が再度導入されています。

診断基準も11項目と多くなっており、該当する項目数によって軽度から重度まで3つに分けられます。このような疾患概念の変化は、依存や嗜癖の問題を幅広く捉え、より軽症のうちに介入することを可能にするだけでなく、治療目標の多様化といったメリットをもたらしています。

(最終更新日:2021年8月18日)

樋口 進 ひぐち すすむ

独立行政法人 国立病院機構 久里浜医療センター 院長

参考文献

  1. World Health Organization.
    The ICD-10 Classification of Mental and Behavioural Disorders: Clinical Descriptions and Diagnostic Guidelines.
    Geneva: World Health Organization; 1992.
    融道男, 中根允文, 小見山実 監訳.
    ICD-10精神および行動の障害-臨床既述と診断ガイドライン-.
    医学書院, 東京, 1993.
  2. American Psychiatric Association
    Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fourth Edition, Text Revision.
    Washington, DC: American Psychiatric Association; , 1994.
    高橋三郎, 大野 裕, 染谷俊幸 訳.
    DSM-IV-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル.
    医学書院, 東京, 1995.
  3. American Psychiatric Association
    Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition.
    Arlington, VA: American Psychiatric Association; , 2013.
    高橋三郎, 大野 裕 監訳.
    DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル.
    医学書院, 東京, 2014.
  4. 樋口 進ほか(編)
    健康日本21推進のためのアルコール保健指導マニュアル
    社会保険研究所, 東京, 2003.