アルコールは運転に必要な技術や行動に対して極めて低い血中濃度から影響を与え、血中濃度が高くなればその分影響も強くなることが知られています。例えば集中力・多方面への注意・反応時間などは、日本の道路交通法により検挙される濃度(血中濃度0.03%)より低い濃度から障害されます。当然のことながら素面(しらふ)の状態よりアルコールの存在下の方が技術が向上するという証拠は全くありません。
アルコールの急性効果の中心は脳に対するものです。この効果は血中濃度がゼロから上昇するにつれて、脳の様々な機能に影響していきます。個人差は認められるものの、アルコールは運転に必要な技術や行動に対して極めて低い血中濃度から影響を与え、血中濃度が高くなればその分影響も強くなることが知られています。素面(しらふ)の状態よりアルコールの存在下の方が、技術が向上するという証拠は全くありません。
表は実際の運転に必要な個々の技能に対して、どの位の血中濃度からアルコールの影響が出てくるかをまとめたものです[1][2][3]。表の血中濃度は主に欧米の研究結果をもとにしています。
運転技能 | 血中濃度 |
---|---|
集中力が下がる | 0.01%未満 |
多方面への注意力が向かなくなる | 0.02% |
反応時間が遅れる | 0.02% |
トラッキング技能が阻害される | 0.02% |
ハンドル操作がうまくできなくなる | 0.03% |
視覚機能が阻害される | 0.04% |
規制を無視し始める | 0.05% |
表のように安全運転に必要な様々な技能は、かなり低い血中アルコール濃度で影響を受け始めることがわかります。またかなり少ない飲酒量で、その血中濃度に到達する可能性があることも理解していただけたと思います。表中にトラッキングと耳慣れない用語が出ています。これは運転シミュレータのスクリーンまたは実際の運転で、道路に沿って物体を追っていく技能で、実際の車のコントロールに似た技能と考えられています。
日本の道路交通法では血中濃度0.03%以上が「酒気帯び運転」で検挙されます。しかし表からわかるとおり、実はこれより低い濃度からアルコールは運転技能を障害し始めます。これらのデータは欧米人に対する実験結果をもとにしています。日本人の約半数は、少量の飲酒で顔面紅潮・心悸亢進などのフラッシング反応を示します。これらの人々は、表の数値より低い濃度から影響を受ける可能性があるかもしれません。
(最終更新日:2021年10月19日)