2019年に策定された「健康寿命延伸プラン」は、健康寿命の目標と、その目標を達成するための施策について定めたものです。2040年までに健康寿命を男女ともに2016年に比べて3年以上延伸し、75歳以上とすることを目指しています。
2018年10月に設置された「2040年を展望した社会保障・働き方改革本部」(本部長:厚生労働大臣)において「健康寿命延伸プラン」を策定するに当たり、健康寿命の現状や課題について整理を行う必要が生じました。そこで、厚生労働省は「健康寿命のあり方に関する有識者研究会」を立ち上げて健康寿命の定義や延伸目標などについて検討を行い、2019年3月に報告書をとりまとめました。
2019(令和元)年における我が国の平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳であり、健康寿命とはそれぞれ約9年、約12年の差があります。国民一人ひとりが健やかで心豊かに生活できる活力ある社会を実現し、社会保障制度を持続可能なものとするためには、平均寿命を上回る健康寿命の延伸を実現することが必要です。
健康寿命とは、集団の健康状態を表す健康指標の一つです。従来は平均寿命が広く用いられてきましたが、生きている状態(QOL:生活の質)を勘案することが重要であるとの認識が高まり、死亡データだけでなく生きている状態のデータを組み合わせた「健康統合指標」として健康寿命が着目されるようになりました。我が国では、WHOが2000年に発表した世界の健康寿命ランキングで日本が世界一であったことが取り上げられたのを契機に国民の関心を呼び、同年に策定された健康日本21(第一次)においても「健康寿命の延伸」を最大の目標とすることが掲げられました。
低栄養はフレイルを招く重要な因子であり、また、転倒予防や介護予防の観点からも重要で、低栄養の予防は、健康寿命の延伸に繋がります。
*フレイル…フレイルは、体重減少、疲れやすさの自覚、活動量の低下、歩行速度の低下、筋力低下の5項目のうち3項目以上に該当することによって、診断されます。フレイルは、転倒、日常生活活動度の低下、入院、死亡などと関連があることが明らかになっています。
「健康日本21(第三次)」とは、2013(平成25)年度~2023(令和5)年度に実施した「健康日本21(第二次)」に続き、2024(令和6)年度から2035(令和17)年度にかけて行う国民健康づくり運動のことです。
「健康日本21(第三次)」とは、2024(令和6)年から2035(令和17)年にかけて実施される国民健康づくり運動のことです[1]。「全ての国民が健やかで心豊かに生活できる持続可能な社会の実現」というビジョンのもと、51項目の目標が設定されています。このうちの3項目が身体活動・運動に関する目標です(表1)。
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日本において、2000年からの健康日本21(第一次)以降、健康増進法の改正をはじめとするさまざまなたばこ規制・対策が実施されています。しかし、2005年に発効したWHO「たばこ規制枠組条約」において求められている内容と比較すると、まだ十分でない点が多く、今後のさらなる取り組みが必要です。
高齢者にとって過度の飲酒は健康寿命に関わる病気の強力なリスク因子です。特徴として自身の退職や配偶者の死などのライフイベントが飲酒量を増やす原因となります。生き生きとしたライフスタイルを維持し、「節度ある適度な飲酒」を守ることが肝要です。
外食とは、食堂やレストランなどの飲食店やファストフード店・喫茶店・居酒屋・事業所給食等での食事を指します。外食の利用は、特に単身者や20~30代の男性で多い傾向にあります。外食店を日常的に利用する場合、健康管理のためにも、料理を上手に選ぶことが大切です。
全身持久力はスタミナや粘り強さのことをいいます。運動生理学の分野では、最大酸素摂取量という指標によって全身持久力を評価します。最大酸素摂取量が多い人は心血管系疾患の罹患率や死亡率が低いことがいくつかの研究で明らかにされています[1][2]。つまり全身持久力を高めることは、健康づくりに役立つといえます。