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健康寿命の定義と算出方法

健康寿命とは、集団の健康状態を表す健康指標の一つです。従来は平均寿命が広く用いられてきましたが、生きている状態(QOL:生活の質)を勘案することが重要であるとの認識が高まり、死亡データだけでなく生きている状態のデータを組み合わせた「健康統合指標」として健康寿命が着目されるようになりました。我が国では、WHOが2000年に発表した世界の健康寿命ランキングで日本が世界一であったことが取り上げられたのを契機に国民の関心を呼び、同年に策定された健康日本21(第一次)においても「健康寿命の延伸」を最大の目標とすることが掲げられました。

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健康寿命の定義

健康寿命とは、ある健康状態で生活することが期待される平均期間を表す指標です。これは、算出対象となる集団の各個人について、その生存期間を「健康な期間」と「不健康な期間」に分け、前者の平均値を求めることで表すことができます。

健康寿命を算出するうえで課題となるのが、「健康」と「不健康」の定義とそれに基づく算出方法です。算出方法には、健康な状態と不健康な状態とに二分して健康な状態の期間を表す方法と、不健康な状態をレベルによって重みづけし、完全な健康(full health)に相当する期間として表す方法に大別されます。我が国が採用している健康寿命は前者を、WHOが発表している各国の健康寿命(HALE, Healthy Life Expectancy)は後者の方法を採用しています。

国民生活基礎調査をもとに健康寿命を算出

健康日本21(第一次)当時は健康寿命の算出方法は明確に規定されておらず、具体的な数値目標が示されませんでした。しかし、2012年に策定された健康日本21(第二次)では下記のように「日常生活に制限があること」を不健康と定義し、3年ごとに実施される「国民生活基礎調査(大規模調査)」で得られたデータをもとに算出することになりました。

(1)「日常生活に制限のない期間の平均」(主指標)
「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」という質問に対して、「ない」という回答を「健康」とし、「ある」という回答を「不健康」として、サリバン法*により算出します。
(2)「自分が健康であると自覚している期間の平均」(副指標)
「あなたの現在の健康状態はいかがですか」という質問に対する、「よい」「まあよい」「ふつう」という回答を「健康」とし、「あまりよくない」「よくない」という回答を「不健康」として、サリバン法により算出します。

 

「健康日本21(第二次)」では、前者を主指標、後者を副指標と位置付け、この2つの指標により健康寿命を評価することにしましたが、これまでの「健康寿命の延伸」のみならず、「不健康な期間」である「平均寿命と健康寿命の差」の短縮(「平均寿命と健康寿命」 参照)にも着目し、目標とすることになりました。

 

*サリバン法

毎年必ず10万人が誕生する状況を仮定し、そこに年齢別の死亡率と、年齢別の「健康・不健康」の割合を与えることで、「健康状態にある生存期間の合計値(健康な人の定常人口)」を求め、これを10万で除して健康寿命を求めます。なお、我が国の現行指標では、簡易生命表から5歳階級別の定常人口、国民生活基礎調査から5歳階級別の「健康・不健康」の割合を得て、「健康な人の定常人口」を求めています。

 

(最終更新日:2022年01月11日)

佐藤 敏彦

佐藤 敏彦 さとう としひこ

青山学院大学 特任教授

1986年慶應義塾大学医学部卒業。米国ピッツバーグ大学公衆衛生大学院修了、同研究員、東京女子医科大学公衆衛生学講師、世界保健機関ジュネーブ本部「政策と情報のためのエビデンス」局サイエンティスト、北里大学医学部公衆衛生学教室准教授、同臨床研究センター教授を経て現職。一般社団法人ヘルスケア・データサイエンス研究所理事長(兼職)、厚生労働省「医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会」委員。専門は公衆衛生学、特に疫学、健康情報学。

参考文献

  1. 厚生労働省.
    健康寿命のあり方に関する有識者研究会報告書.
    2019年3月.
    https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000495323.pdf
  2. WHO.
    The World Health Report 2000: Health Systems : Improving Performance June 2000.
    https://apps.who.int/iris/handle/10665/42281
  3. 平成26年版 厚生労働白書 第3章 「健康寿命の延伸に向けた最近の取組み」