たばこの煙の中には、多くの発がん性物質が含まれます。喫煙は、多くの発がん性物質への暴露やDNAの損傷を引き起こし、がんのリスクを高めます。喫煙との因果関係が明らかになっているがんには、肺がん、口腔・咽頭がん、喉頭がん、鼻腔・副鼻腔がん、食道がん、胃がん、肝臓がん、膵臓がん、子宮頸がん、膀胱がんがあります。また、がん患者の喫煙は、生命予後を悪化させること、および二次がんを引き起こしやすくすることもわかっています。
たばこの煙には5,000種類以上の化学物質が含まれます。健康影響が懸念され、発がん性があると報告されている物質が約70種類存在します[1]。喫煙は、発がん性物質への暴露やDNAの損傷により、多くの細胞を遺伝的に変化させる、がん抑制遺伝子の発現調節を変化させるなど、がんの発生メカニズムの様々な段階に作用すると考えられています[1][2]。
これまでの研究から、喫煙が肺がんをはじめとするさまざまながんの原因となることが、科学的に明らかにされています。喫煙している人がなりやすいがんとして、がんとの因果関係が明らかな「レベル1」と判定されているのは、鼻腔・副鼻腔がん、口腔・咽頭がん、喉頭がん、食道がん、肺がん、肝臓がん、胃がん、膵臓がん、子宮頸がん、膀胱がんです【図】[1][3]。喫煙年数が長いほど、また1日の喫煙本数が多いほど、がんになりやすい傾向が大きくなります。
さらに、たばこを吸っているがん患者では、がんの再発や、別の新たながん(二次がん)が発生しやすいことが明らかになっています[1][3]。
たばこの煙に含まれる有害化学物質や発がん性物質は、副流煙や喫煙者が吐き出す煙の中にも含まれています。たばこの煙は、喫煙しない周りの人の健康へも悪影響を及ぼします。
肺がんについては、受動喫煙とがんとの因果関係が明らかな「レベル1」と判定されています[1]。日本人を対象とした9つの疫学研究を統合解析した結果において、受動喫煙があると肺がんのリスクが約1.3倍増加することが報告されており、国際的な結果と同様であることが確認されています[4]。また、鼻腔・副鼻腔がん、乳がんについても、現在までに得られている科学的知見が必ずしも十分ではないものの、受動喫煙とがんとの因果関係があると考えられる「レベル2」とされています[1]。
加熱式たばこの煙に含まれる発がん性物質については、紙巻たばこよりも少ないという報告はあるものの、その一方で、紙巻たばこには含まれない有害化学物質や紙巻たばこよりも多く含む物質があるという指摘もあります[3][5][6]。
喫煙を開始してからがんに罹患するまでには、20-30年という期間があります。加熱式たばこがわが国で販売を開始し、急速に普及してからまだ10年になりません。現時点では加熱式たばことがんの因果関係は明らかになっておらず、また明らかになるまでには時間がかかると見込まれます[3][5][6]。
「たばことがん」についてさらに詳しく知りたい人は、国立がん研究センター がん情報サービスの関連ページ(参考文献[3][5]-[8])もあわせてご覧下さい。
(最終更新日:2022年12月13日)