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特定健診・保健指導における身体活動・運動指導

特定健診・保健指導は、医療制度改革の一環として取り組まれる生活習慣病予防対策のひとつとして実施されている保健制度です。国保・健保といった保険者に、メタボリックシンドロームに焦点を当てた健診(特定健診)の受診率のアップと、運動・食習慣の改善を通した保健指導によりメタボ該当者やその予備群の減少を義務づけました。保健指導は運動習慣や身体活動の改善が重要な指導内容です。

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特定健康診査・特定保健指導は、医療制度改革の一環として取り組まれる生活習慣病予防対策のひとつとして、「高齢者の医療の確保に関する法律」に基づき2008年(平成20年)4月より実施され、2013年(平成25年)4月より第2期の取り組みに入った制度です。国民健康保険・健康保険組合といった保険者に、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群、メタボ)に焦点を当てた健診(特定健診)の受診率のアップと、運動・食習慣の改善を通した保健指導によりメタボ該当者やその予備群の減少を義務づけました。保健指導は「1に運動 2に食事 しっかり禁煙 最後にクスリ」の標語にあるように、運動習慣や身体活動の改善が重要な指導内容です。

すでにメタボリックシンドローム・糖尿病高血圧症・脂質異常症などの疾患を有する者でも、身体活動・運動の増加によって、これらの疾患が改善の方向へ向かうと同時に、虚血性心疾患脳梗塞・一部のがんなどの発症が予防できることが示唆されています。日本肥満学会・日本糖尿病学会・日本高血圧学会・日本動脈硬化学会は、各治療ガイドラインにおいて運動療法を推奨しており、それぞれの学会で表現は若干異なりますが、概ね1日30~60分の中強度有酸素性運動を週3日以上(10メッツ・時/週以上)実施することが各疾患の治療・改善に望ましいとしています。

保健指導では身体活動・運動量の目標を明確に示すと同時に、保健指導対象者が現状でどのような運動・身体活動の現状にあるかを知ることが重要です。このような評価に質問紙や活動量計(歩数計)などを積極的に利用するべきです。個人の運動・身体活動量は保健指導における運動・身体活動支援におけるスタート地点を示しており、指導対象者ひとりひとりの運動・身体活動指導計画を立案するにあたり重要な情報のひとつです。

メタボリックシンドロームになってしまった人は、そもそも身体活動・運動量が少なく、からだを動かすことに嫌悪感・抵抗感を持っている人が多くいます。1日30~60分の中強度有酸素性運動を週3日以上働き盛りの中年が実施することには様々な困難が伴いますので、厚生労働省「健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)」に示されているように「1. 最初は+10(プラステン:今より10分余分に歩く)程度から始める」「2. 個々人の生活スタイルに応じた運動・生活活動の取り組み」「3. 行動変容理論に基づき、個人の運動に対する心理的準備状況に応じた取り組み」「4. 食事・栄養改善との組合せによる腹囲の減少の取り組み」[1]などの配慮が不可欠です。

保健指導の対象者は、完全に健康な人々と比較して傷害や事故などに遭遇するリスクが高くなります。また保健指導では、非監視下で運動や身体活動に取り組んでいただくため「1. 運動にふさわしい服装や傷害予防のための靴の選び方」「2. 運動前後の準備・整理運動の実施方法の指導」「3. 実施運動種目の正しいフォームの指導」「4. 膝や腰に整形外科的問題のある人への歩行以外の運動種目の指導」などリスクの回避と安全確保のための配慮が不可欠です。

医師・保健師・管理栄養士にとって、以上の内容を限られた時間の中で指導することは大変な負担です。「標準的な健診・保健指導プログラム【平成30年度版】」には、「運動指導に関する専門的知識及び技術を有する者(健康・体力づくり事業財団が認定する健康運動指導士や事業場における労働者の健康保持増進のための指針に基づく運動指導、産業栄養指導、産業保健指導担当者等)が実施する。」[2]と書かれています。十分な知識と経験を有した身体活動・運動の専門家は効果的な保健指導を進める上で欠かすことができません。

(最終更新日:2019年6月3日)

参考文献

  1. 厚生労働省.
    健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド).
    2013.
    https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002xple-att/2r9852000002xpr1.pdf
  2. 厚生労働省.
    標準的な健診・保健指導プログラム【平成30年度版】.
    2018.