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アルコール依存症の薬物療法

アルコール依存症の断酒維持のための薬物療法として、抗酒薬(ジスルフィラム・シアナミド)と飲酒欲求を減らす薬(アカンプロサート)が利用できます。抗酒薬は飲酒後の不快反応を利用して心理的に飲酒を断念する薬、アカンプロサートは脳内に作用して飲酒への欲求を減らすことで断酒を補助する薬です。

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アルコール依存症の薬物療法

アルコール依存症の治療での薬物療法の役割は、ふたつあります。ひとつは離脱症状や不安・不眠などの併発症状を軽減させるためのもので、主にベンゾジアゼピン系の抗不安薬・睡眠薬が用いられます。もうひとつは断酒を維持するための薬物療法です。ここでは断酒維持を補助するための薬物療法について書きたいと思います。

断酒維持のために使用される薬物は、大きく分けて2種類があります。ひとつは抗酒薬と呼ばれる薬剤で「飲酒すると気持ち悪くなる」という状態を作ることによって飲酒行動を起こさなくするもの、もうひとつは中枢神経に作用して飲酒欲求を直接減らすことにより断酒を補助する薬剤です。

抗酒薬

抗酒薬は従来から用いられており、国内ではジスルフィラム(商品名:ノックビン)とシアナミド(商品名:シアナマイド)が利用できます。これらの薬は、アルデヒド脱水素酵素(ALDH)を阻害するので、抗酒薬を服用中に飲酒した場合、血中アセトアルデヒド濃度が上昇し、「悪心・嘔吐」「頭痛」「動悸」「顔面紅潮」「呼吸困難」などのアセトアルデヒドによる不快な反応を引き起こします。よって抗酒薬を服用していれば、生活の中で飲酒をしたくなるような出来事があった場合にも「飲んでも気持ち悪くなるからやめよう」と考え、心理的に飲酒を断念しやすくなるという効果があります。
ジスルフィラムは100-300mg、シアナミドは5-20mlを通常1日1回服用します。シアナミドの方がジスルフィラムに比べて速効性ですが、効果の持続も短いことが知られています。主な副作用としては、アレルギーによる皮疹・肝障害が起こる可能性があるため、特に服用の初期には血液検査などを行うことが望ましいとされています。また重症の肝硬変や心・呼吸器疾患が合併する場合は使用できません。

飲酒欲求を抑制する薬

飲酒欲求を抑制する薬剤として、国内ではアカンプロサート(商品名:レグテクト)があります。欧米では20年以上前から使用されてきた薬剤ですが、日本では2013年5月に承認され発売されました。アカンプロサートは、主に脳内のNMDA受容体を介する神経伝達を阻害することによって効果を現すのではないかと考えられています。飲酒への欲求を軽減させることにより断酒率を高める効果があり、多くの研究で再飲酒のリスクを低減させることが確かめられています。
アカンプロサートの効果は、断酒をしている人が服用すると断酒率が上がりますが、飲酒している人が服用してその飲酒量を少なくする薬剤ではないようです。そのため服用にはきちんと断酒をしていることが前提とされています。通常1日3回2錠ずつ服用することになっています。副作用としては、下痢・軟便が起こることがありますが、多くの場合は一過性でしばらくすると軽快することが多いです。また重症の腎障害がある場合は服用できません。相互作用は少ないため、抗酒薬との併用も可能と考えられています。

海外では飲酒している人の飲酒量を下げる効果があるナルトレキソン・ナルメフェンといった薬剤も使用されていますが、日本ではまだ承認されていません。

薬物療法の効果を高めるために

どちらの薬剤も薬物療法の有効性に影響を与える因子として一番重要なのは、服薬のアドヒアランス(きちんと薬を服用しているか)です。アドヒアランスを向上させるために、毎朝家族の前で薬を飲む、薬箱を作って服用したかどうかをチェックできるようにするといった工夫が、治療効果を上げることにつながります。またこれらの薬は、薬を服用しただけで断酒に成功するというものではありません。薬物療法と他の心理・社会的な治療、自助グループへの参加と組み合わせることが、効果を最大限に得るために重要なことです。