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葉酸とサプリメント ‐神経管閉鎖障害のリスク低減に対する効果

葉酸は水溶性ビタミンであるビタミンB群の一種です。近年の多くの研究から、妊娠初期における葉酸摂取の不足により胎児における神経管閉鎖障害(NTD: neural tube defects)の発症率が高まることが明らかにされました。そこで日本では2000年に厚生労働省から妊娠の可能性がある女性に対して、葉酸摂取に関する通知が出されました。

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葉酸と神経管閉鎖障害

葉酸は細胞増殖に必要なDNA合成に関与しています。またホモシステインというアミノ酸の一種が蛋白質の合成に必要なメチオニンという必須アミノ酸に変換される過程に必要とされます。
妊娠初期は胎児の細胞増殖が盛んであるため、この時期に葉酸摂取が不足すると胎児の神経管閉鎖障害の発症リスクが高まることが示唆されています。神経管閉鎖障害とは脊椎の神経管の癒合不全による先天異常であり、日本では神経管閉鎖障害のうち脊椎に癒合不全が生じる二分脊椎が大部分を占めます。日本における二分脊椎の発症率は1999-2003年で出生1万対5.12であることが国際クリアリングハウスにより報告されています。

過去において欧米諸国では神経管閉鎖障害の発症率が高率であったこともあり、発症リスク低減に対する葉酸の効果について、大規模な疫学研究が数多く行なわれました。それらの研究は受胎前後における充分な葉酸の摂取により、胎児の神経管閉鎖障害の発症リスクが大幅に減少することを示しました。そこで世界各国で妊娠を希望する女性に対してサプリメントなどの栄養補助食品からの葉酸摂取に関する勧告が出され、また葉酸を添加した食品も普及しました。その結果、欧米諸国での神経管閉鎖障害の発症率は近年著しく減少しています。こうした背景から、日本でも2000年に厚生労働省から神経管閉鎖障害のリスク低減のために妊娠の可能性がある女性は通常の食事からの葉酸摂取に加えて、いわゆる栄養補助食品から1日400μgの葉酸を摂取するよう通知が出されました。

葉酸の生体利用率

諸外国や日本において、食事からの葉酸だけでなくサプリメントなどの栄養補助食品からも摂取するよう勧告されたことには理由があります。葉酸は野菜や柑橘類・レバーなどに多く含まれており、小腸でモノグルタミン酸として吸収されます。しかしながらこれら食品中の葉酸(dietary folate)の大部分はポリグルタミン酸型として存在し、モノグルタミン酸として消化吸収されるまでの代謝過程で様々な影響を受けるため、生体利用率は50%以下と推定されています。また水溶性ビタミンであるため調理損失も受けやすくなっています。これに対していわゆるサプリメントなどの栄養補助食品や葉酸添加食品に使用される葉酸(folic acid:プテロイルモノグルタミン酸)は通常の食品中の葉酸とは構造が異なっており、安定性及び生体利用率が高いことがわかっています。葉酸と神経管閉鎖障害のリスク低減との関連を示した諸外国の大規模な疫学研究の結果は、この葉酸(folic acid)のサプリメントによるものがほとんどです。

もちろん食品中の葉酸は効果がないわけではなく、食事からの高葉酸(dietary folate)摂取でリスクが低減できたとする論文も報告されています。しかしサプリメント等の葉酸(folic acid)と比較すると、食品中の葉酸(dietary folate)は摂取した量の利用率が一定でなく、神経管閉鎖障害のリスク低減に関する科学的根拠もいまだ充分でありません。そのため現状では諸外国でも日本においても神経管閉鎖障害のリスク低減の観点からは、食事からの葉酸に加えて栄養補助食品からの葉酸を摂取するよう勧告されています。葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)は二分脊椎などの神経管閉鎖障害を持つ子どもが生まれるリスクを低減できる可能性があるとして、厚生労働省は特定保健用食品の関与成分として認めています。

2010年版の日本人の食事摂取基準では、成人における葉酸摂取の推奨量は240μg/日です。栄養補助食品等、通常の食品以外から摂取される葉酸(folic acid)の耐用上限量は1,300-1,400μg/日とされています。通常の食品から摂取する場合と異なり、サプリメントや栄養補助食品の多用は容易に耐用上限量を超えることになりますので注意が必要です。葉酸の過剰摂取はビタミンB12欠乏症を診断しにくくすることも知られており、適切な量を摂取することが大切です。

参考文献

  1. 佐藤(三戸)夏子, 瀧本秀美
    葉酸と胎児発育.
    ビタミン 82 (1): 19-23, 2008.
  2. Anne M. Molloy
    Folate bioavailability and health.
    Int. J. Vitam. Nutr. Res., 72 (1): 46-52, 2002.