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糖尿病を改善するための運動

糖尿病の治療には、運動療法・食事療法・薬物療法の3本柱があります。運動療法により血糖コントロール・インスリン抵抗性・脂質代謝の改善が得られ、糖尿病を改善します。運動療法の目標として、運動の頻度はできれば毎日、少なくとも週に3~5回、運動強度は中等度(ややきつい)の全身を使った有酸素運動、運動時間は各20~60分間行い、計150分以上が一般的に勧められています。また、週に2~3回のレジスタンス運動を同時に行うことが勧められています。

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「平成29年国民健康・栄養調査」の結果において、国内の糖尿病の有病者か予備群(糖尿病が強く疑われる者)の割合は男性18.1%、女性10.5%であり[1]、男女合わせて約1,800万人にのぼると推計されます。現在、過剰な食事摂取・運動不足・ストレスなどの生活習慣を主因として急増している糖尿病はⅡ型糖尿病であり、全糖尿病患者の約9割を占めています。

糖尿病の治療には、運動療法・食事療法・薬物療法(経口血糖降下薬・インスリン治療)の3本柱がありますが、日本糖尿病学会の「科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013」では、糖尿病治療の基本は、「1. 食事療法と運動療法を励行し、血糖値をコントロールする。また、肥満を解消する」「2. 必要があれば、経口血糖降下薬やインスリン療法を行う」「3. 血圧や脂質代謝の管理を行う」「4. 治療の目標は、急性・慢性の合併症の予防、合併症の治療とその進展抑制である」とされています[2]

運動療法は、運動により使われた筋が糖や遊離脂肪酸の利用を促進させるため、血糖コントロールの改善・インスリン感受性の増加・脂質代謝の改善、血圧低下、心肺機能の改善が得られ、糖尿病を改善します。さらに有酸素運動により、内臓の脂肪細胞が小さくなることで肥満を改善し、脂肪組織から産生されるアディポサイトカインなどのインスリンの働きを妨害する物質の分泌が少なくなります。このため筋肉や肝臓の糖の処理能力が改善し、血糖値が安定します。またレジスタンス運動は、筋量の増加が糖の処理能力を改善させるため、血糖コントロールに有効です。運動療法には以下のような運動種目・運動強度・運動頻度・時間が一般的に推奨されています[3]

運動種目
糖尿病を改善させる運動として、有酸素運動とレジスタンス運動の実施が推奨される。また、有酸素運動とレジスタンス運動の併用はそれぞれの運動単独よりも効果的に糖尿病を改善させることも報告されている。
有酸素運動:ウォーキング(速歩)・ジョギング・水泳・自転車などのできるだけ大きな筋を使用する運動。全身運動。
レジスタンス運動:腹筋、ダンベル、腕立て伏せ、スクワットなどのおもりや抵抗負荷に対して動作を行う運動。
*水中運動は有酸素運動およびレジスタンス運動の両方が行える運動種目であり、膝への負担が少なく、肥満糖尿病患者には安全かつ効果的
運動強度
有酸素運動:一般に中等度の強度の有酸素運動(最大酸素摂取量の50%前後、運動時心拍数が50歳未満で100~120拍/分、50歳以降で100拍/分以内)を行うことが勧められている。ただし、不整脈などで心拍数を指標にできない場合、自覚的運動強度として、「ややきつい」または「楽である」を目安とする。
レジスタンス運動:8~10種目のレジスタンス運動を1種目につき、10~15回を1セットとして1~3セット繰り返すことが勧められている。ただし、慣れていない場合にはレジスタンス運動の種目・セット数などを徐々に増やして実施することが推奨される。
運動頻度・時間
有酸素運動:できれば毎日、少なくとも週に3~5回、各20~60分間行い、1週間の合計150分以上の実施が勧められている。糖尿病患者の糖代謝の改善は運動後12~72時間持続することから、血糖値を低下改善させるため、運動はできれば毎日、少なくとも1週間のうち3~5日行う必要がある。また、歩行運動の場合、1回につき、15~30分間、1日2回、1日の運動量として約10,000歩、消費エネルギーとして160~240kcal程度が適当であるとされている。
レジスタンス運動:週に2~3回の実施が勧められている。ただし、虚血性心疾患などの合併症患者などでは高強度のレジスタンス運動の実施は勧められない。また、高齢者においても急激な頻度や回数での実施は勧められない。

運動を実施するタイミングは、生活の中で実施可能な時間であればいつ行っても構いませんが、特に食事の1~2時間後に行うと食後の高血糖状態が改善されます。

運動療法の進め方として、まずメディカルチェックを受けて運動療法の可否を確認した後に、個人の基礎体力・年齢・体重・健康状態などを踏まえて運動量を設定しましょう。最初は歩行時間を増やすなど身体活動量を増加させることから始め、個人の好みにあった運動を取り入れるなど段階的に運動を加え、安全かつ運動の楽しさを実感できるように工夫していくことが運動を継続するために重要なポイントとなります。

運動を実施する上での注意点としては、運動の前後に5分間の準備・整理運動を行うこと、血糖がコントロールされていないⅠ型糖尿病患者、空腹時血糖250mg/dL以上または尿ケトン体陽性者では、運動中に高血糖になることがあるので注意しましょう。また逆に、インスリンや経口血糖降下薬(特にスルホニル尿素薬)で治療を行っている方の場合は低血糖になりやすいことに注意する必要があるので、運動量の多い場合には、補食をとる、あるいは、運動前後のインスリン量を減らすなどの注意が必要です。

(最終更新日:2019年6月4日)

立命館大学 スポーツ健康科学部 スポーツ健康科学科 教授 家光 素行

参考文献

  1. 厚生労働省.
    平成29年国民健康・栄養調査の概要.
    2018.
  2. 日本糖尿病学会.
    科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013.
    2013.
  3. 日本糖尿病学会.
    糖尿病治療ガイド2018-2019.
    2018.